面白くない物語の作り方

面白くない物語の作り方2

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あなたの文章が「稼げない」理由
~『生成AI時代のストーリーテリング』

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あらすじドットコムはアートではなく技術(クラフトワーク)を研究するサイトですが、だからと言ってあなたの物語の芸術性を軽視しているわけではありません。

完璧な芸術作品を作るというのは、作家という存在理由にも関わる重要な目標であります。

ただし困ったことに、芸術性を最優先すると細部まで徹底的にこだわらざるを得ず、初心者ならずともなかなか作品が出来ません。

あのサグラダファミリアのように、完成までに何百年もかかってしまう場合さえあります。

しかし、実際問題、ショートショート1本書くのに3年もかかっていてはヤバいわけで(^^;

エンタテインメント作家を目指すのであれば、作品はできるだけ素早く作るべきでしょう。生産性というのはとても大事な要素なのです。

とはいえ、読む人に楽しんでもらえる娯楽作品を作るというのは、芸術に負けず劣らず手間と時間のかかる作業であります。

作者は地味な取材をして、集めた資料をじっくりと読み込み、個々の素材を膨大な時間をかけて吟味し、事実かどうかの裏を取ったりして、やっとこさ物語作りにこぎつけます。

ところが、本当の問題は実はそこからなんですよね。

せっかく労力をかけて書いたのに、その物語が誰にも面白がられなかったとしたら、創作活動にかけた日々は全て無駄になってしまいます。

「うん、よく調べてるなあ。でも、面白くない」
その一言でボツ。理由は簡単。面白くないと読んでもらえないからです。

でもね、面と向かって面白くないと言われるのはまだ幸運なんですよ。まがりなりにも誰かが読んでくれて評価までしてくれたんですから。

無名の新人が何かを書いたとしても、多くの場合、誰からも何の反応もありません。

石を投げ込んだはずの水面はシーンと静まり返っております。冷たく凍りついております。波紋一つ立つもんじゃありません。

あ~あ、大長編書いちゃったのに……
つまんないなら先にそう言ってよ……

面白くない物語はこのように大変危険です。もしかしてあなたにも同じような経験があったりするのではないでしょうか?

しかし一方では、短時間のうちに書き上げられたにもかかわらず、高い評価を得ている作品があります。アタマに来ますよねえ、まったく。

誰もがきっと思っているはずです。

面白い物語を次から次に書きまくる作者はいったいどんな創作活動をしているのでしょうか?

どうすればもっと効率的にストーリーが書けるのでしょうか?

どんな物差しを使えば書き始めの早いうちに失敗を回避し、進行方向を修正できるのでしょうか?

面白さをチェックする指標とは?

通常、作者は自分のストーリーがどの程度の効果をあげているかを測るためのさまざまな指標を持っています。

この指標こそはあなたの創作活動にとっての生命線です。

自分独りだけでモヤモヤしてても仕方がないのであります。読者からちやほやされない秘密を知りたければ……

まずは指標に従ってあなたのストーリーがウケない原因を分析し、だめだったところを把握しましょう。

さっそく以下の「面白くない物語の指標」の中で心当たりのあるものにチェックを入れてみてください。

☑ オープニングに躍動感がない
☑ 物語に敵(対立軸)がいない
☑ 敵の動機がテキトーすぎる
☑ 敵が怖くない
☑ 敵が憎たらしくない
☑ 主人公に真の目的がない
☑ 主人公に義務がない
☑ 犠牲者がいない
☑ 深甚な被害が発生しない
☑ 登場人物の役割がはっきりしない
☑ 興味をそそる謎がない
☑ 伏線が張られていない
☑ 歓びやときめきの描写がない
☑ 主人公に深刻な危機が訪れない
☑ 解決すべき問題が曖昧である
☑ 出来事が拡散するだけで収束しない
☑ 逆転がない
☑ ツイストがない
☑ 主人公が反転攻勢に出ない
☑ タイムリミットがない
☑ ハラハラさせる場面がない
☑ 誰も謎解きをしない
☑ 伏線が回収されない
☑ 解決すべき問題がグダグダ
☑ 問題解決の切り札がない
☑ 犠牲的な精神の発露がない
☑ カタルシスがない
☑ 主役の内面が変化しない
☑ 結末が予定調和すぎてバレバレ
☑ 心を震わせるような感動がない

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チェックはいくつ付きましたか? もし10個以上付いたのなら……残念ながらその作品はエンタメとしての体をなしていないのではないかと思われます。

もちろんその作品の芸術性を云々するわけではありません。人間の生きる形に正解は無数にあるわけですから。

しかし、誰もが楽しめる娯楽を作る職人の世界は偏屈です。読者の要求が満たされない場合は一定の技術レベルに達していないとみなされます。

つまり、それは「面白くないストーリー」なのであります。

それでは上記の問題をクリアするにはどうすればいいのでしょうか?

あなたの作品にゴールはあるか?

この記事を読んでいるあなたなら、ストーリーに具体的で明確なゴールを設定することがいかに大切か、私が日頃からどれほど大汗をかいて力説しているか(笑)よくご存知でしょう。

それは、作者がついつい「曖昧な」ゴールを設定してしまうことが多いからです。

そして、それを達成するために主人公がとるべき具体的な手段がはっきりしないのはなぜなのだろう、と悩むわけであります。

なぜ主人公がどうすればいいかわからなくなるのか、なぜストーリーが前に進まないのか、と悩むのです。

何度でも言いますが、それはまさに、物語のゴールを具体的かつ明確に設定していないからなのであります。

しかしそれは、書きたいことが見つからないからではありません。

むしろ逆です。

あれも書きたい、これも書かないと、と欲張り過ぎてしまうからなのです。

書きたいことが多すぎて、そのためにピントがズレて本当の目標がぼやけてしまうのです。

では、あなたが物語のゴールを限定し、それを明確な言葉にしているとします。

また、そのゴールに近づくために主人公が選択すべき一連の行動ステップも書き出しているとします。つまり、因果関係に則ったプロットですね。

では、次は何をするべきなのか?

主人公がゴールを達成するための行動ステップはもうわかっています。

しかし、そのゴールに到達する「説得力」や「納得感」を上げる方法がまだ不確かではありませんか?

ストーリーテリングに不可欠な「読者の共感」を誘いながらゴールを達成するためにはどうしたらいいのでしょうか?

そこで、あなたの作品をできるだけ具体的かつ効果的に成長させる方法についてお話しします。

端的に言いますと、あなたが感動した他人の作品を作者としての角度から見ることで、その技術を盗むのです。

名作の感動を取り込み、再現することで、あなた個人の力量の限界を突破するのです。

そうすれば、これから書くつもりの物語に今まで思ってもみなかった豊かな広がりを与えられるでしょう。

作者として自立するために、あなたが最初になすべきことは「自分自身の技量の客観視」です。

そのためには、世界中が認める大作家の名作を分析し、そこですでに明らかにされているスタンダードな技術を再現することです。

大作家と同じ技術を使ってみることで、あなたは彼我の実力の格差を実感できます。

自分に何が足りず、どこが間違っているかが把握できます。

学ぶという言葉は「真似ぶ」という古語がルーツです。

謙虚に、一生懸命に真似をするのです。

テクニックというものはそうやって初めて身につけることが出来るのです。

あなたのストーリーを成長させるには

何はともあれまずは名作を読んでください。

もちろん名作映画やマンガでもいいのですが、あなたが物語を作る場合、最初はとりあえずアイデアを文字にすることになります。

テキストにする手間を考えると小説、それも最初はあまり長くない作品がいいでしょう。

名作として評価の定まった短編小説を時間をかけてじっくり鑑賞してみてください。

これは面白いと思う作品が見つかったら、今度はそのストーリーを解析しましょう。

どの部分がなぜ面白かったのか?

どうして面白いと感じたのか?

その仕掛けを徹底的に調べ上げて名作の謎を解明するのです。

解析できたら面白かった部分を真似しましょう。舞台や小道具や登場人物を変えて書き出してみてください。

O・ヘンリや芥川龍之介や志賀直哉の名作を、筋立てだけそのままで、あなたが好きな舞台や小道具やオリジナルのキャラクターを使って書き直すのです。

何のためにそんなことをするのかと言ったら、そのアイデアを盗むためです。盗むというのは、自分の作品の中で同じ技術を再現することです。

その結果、名作と同じ効果を生むことが出来たら、あなたはそのテクニックをゲットしたと言えます。

それを確かめるためにも、身近な誰かに読んでもらうといいでしょう。

名人と同じ技術を使ったのですから誰からも「面白い!」という感想がもらえて当たり前です。

もしも面白がってもらえなかったら、あなたはその技術をマスターできていないということです。

また、もう一つ重要な条件として、ネタ元がバレたら失敗です。

「あれ? これって『賢者の贈り物』だよね?」と言われたらそこまでです。それは再現ではなくてほとんどコピペですからね。

あなたがすべきなのは「面白さの本質だけを再現する」ことです。

そのためにはいかにうまくアレンジして本家の匂いを消せるかということがポイントです。

元ネタがバレることなく「面白い」と言ってもらえるまでチャレンジし続けましょう。

ただし、うまく再現できるものばかりとは限りません。ちなみにO・ヘンリ『賢者の贈り物』は誰がどうアレンジしてもほとんどネタバレするという恐るべき完成度を誇る作品です。一度ぜひ挑戦してみてください。

この練習をすると、あなたが今までに考えたこともないような話が飛び出してきます。そして、ストーリーに対する視野がぐっと広がります。

あなたは本当に面白い話を作りたいですか?

面白い作品を作りたければ、まずは面白い作品を見つけてください。そしてその面白さを盗んでください。面白いストーリーを作るための、おそらくこれが最短の近道です。

漠然と捉えていた「面白さ」の形を明確に把握して、その本質だけをきっちり盗めれば、それがあなたの実力査定になります。

元ネタがバレたり真似すらできないうちは、まだまだあなたの視野が狭いということです。練習を積んで観察眼と表現力、そしてオリジナリティを養ってください。

 

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