対立時を2つ作る

対立軸を2つ作ろう

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ストーリーに事件が足りない。
登場人物が行動してくれない。
話がちっとも前に進まない。

そんな悩みがあるのなら、ぜひ使いこなして欲しい法則があります。

それは主人公と対立する存在を作ることで発動します。

ただし、対立軸は2種類必要です。

対立軸を2つ作ることによって、やることがなくてじっと立ち止まっていたキャラクターがゴールに向かって走り始め、その連鎖反応がドミノ倒しのようにつながっていきます。

『2つの対立軸』は、ゴールを設定することによって全体のプロットを一挙に構築してしまう法則なのです。

これを導入すれば、あなたの物語は必ず動き出します。

嘘だと思ったら試してみてください。最初はちょっと小難しいけど、それだけの価値はあります。

 

2種類の物語タイプ

物語のタイプには『破壊』をゴールに設定したものと『和解』をゴールに据えたものとがあります。

強敵を倒すのが主人公の最終目標だという場合は「破壊がゴールの物語」です。

人格のない障害を克服するまでの顛末。例えば、アイガー北壁を登ったり、アルカトラズ刑務所から脱獄したりするのもまた「破壊がゴールの物語」です。

要するに、不倶戴天の絶対的な敵であるとか、自然現象や物理的な環境という意思の疎通が図れないような対象をブレイクするのが目的のストーリー。

それが『破壊の物語』です。

対して、ケンカ相手と仲直りするのが主人公の最終目標だという場合は「和解がゴールの物語」となります。

片思いの人に勇気を出して告白して受け入れられるのも「和解がゴールの物語」です。

要するに、もともと愛情を感じていたり、話し合って妥協する余地があるのに関係がうまくいっていない相手と、理解し合い許し合うのが目的のストーリー。

それが『和解の物語』です。

作者がどちらのタイプの物語を作りたいかによって、2つの対立軸の優先順位が替わります。

 

2つの対立軸

では、その『2つの対立軸』とはいったいどんなものなのでしょうか?

それぞれの対立軸の性格は次の通りです。

X:最終的に主人公が破壊することによって解消する対立軸

Y:最終的に主人公が和解することによって解消する対立軸

説明の便宜上、Xのほうを『破壊の対立軸』、Yのほうを『和解の対立軸』と呼びます。

ここで注意してほしいことがあります。ストーリーの対立軸は、対立それ自体が目的ではありません。二つとも、解消することを目的に作られた対立軸なのです。

ここがポイントです。ちょっとこんがらがってしまうかもしれませんが、ここをしっかりと理解してください。

物語というのは「対立が発生して主人公がそれを解消するまでの顛末」が描かれたものです。ただし、これは読者目線です。

作者目線で言うとこうなります。物語とは「対立を発生させて主人公にそれを解消させるまでの顛末」を描くもの。つまり、物語作者の仕事は「わざと対立を作ってそれを解消してみせる」ということなんですね。

 

作者の自覚と覚悟

作者はとにかくまず、全ての原因である対立を自分の手で作らなければならないのです。これは作者としてのマインドセットの話になりますが、もっと能動的に、積極的に、あなたが事件を起こすつもりで書くのです。

バランスを取ったり帳尻を合わせてはいけません。異常な事態を描くのがストーリーの本質なのです。登場人物に空気を読ませてありがちな方向へ押し流してはいかんのであります。

作者は何があっても常識に囚われず、世間とのお付き合いを断固として拒絶し、人でなしの気持ちになって計画を立て、矛盾を抱えているのを承知でむちゃくちゃな決断を下してください。

しかし、同時に全てをコントロールして、最後はスパッと手際よく、あるべきところに収めてください。

あなたは登場人物の依代となり、感情を高ぶらせ、暴走しなければならないのですが、それでもプロットの合理性をキープしなければなりません。

そのために「物語の型」があるのです。

 

対立と解消

いかにして対立を作り、それを解消するか、という話をします。そもそも、対立とは具体的にどんな状況を指すのでしょうか?

対立とは、異なる二つの立場が衝突することです。そして、その対立が原因で具体的な問題が生じてきます。

例えば『水争い』なんかが分かりやすいですね。日照りの夏、山上の水源が涸れ、農業用水路を流れる水の量が少なくなります。そうすると、上流の人は水を堰き止めて、まずは自分の田んぼに水を引こうとします。

ところが、そんなことをされては下流の人はたまりません。「水門を開け!」と怒鳴り込みます。これが対立ですね。

しかし、上流の人は水門を開けようとはしません。下流の田んぼの稲が枯れ始めます。これが対立によって生じた問題です。

問題の解決方法には「相手をやっつける(破壊型)」か「相手と妥協する(和解型)」かしかありません。

水争いの話で言えば、上流と下流で水門を挟んでの肉弾戦で決着をつけるという破壊型ストーリー。

あるいは、話し合いによって両者に等分に水が流れるように水門を開くという和解型ストーリー。

このように、物語はその対立解消の方法によって、破壊型と和解型に分かれるわけなんです。

解決手段は戦争か、あるいは共存か、ということなんですね。

うーん、抽象的な話を続けてたら頭が痛くなってきたわい。なので、もっと具体的な事例を見てみましょう。

 

少年ジャ◆プの王道マンガ

まずは『破壊』をゴールに据えた作品のあらすじパターンです。

「聖闘士☆◆矢」「キ◆肉マン」「ドラ◆ンボール」などなど、少年ジャ◆プの王道マンガでお馴染みのパターンを思い浮かべてください。

主人公が死力を尽くしてライバルを倒します。するとそのライバルの上役みたいなのが出てきて、こいつはさらに強くて怖いわけです。

さてどうするべと主人公が悩んでいると、先日戦ったライバルがやってきて主人公に力を貸してくれるんですね。

いつしか二人の間には戦った者同士の信頼感みたいなものが芽生えており、その友情パワーで新しい敵をぶっ飛ばすわけです。

この時、『和解の対立軸』は、拳を交えたおかげで友情の芽生えたライバルです。

そして『破壊の対立軸』は新たにやってきた怖い敵です。

 

ハリウッド・アニメ

次に『和解』をゴールに据えた作品のあらすじパターン。

実例はあの世界的大ヒットアニメ映画。不思議な力を持った姉とその妹の物語です。もちろん観ましたよね? 歌も熱唱しましたよね? 雪が降っても少しも寒くなかったぐらいですよね。

あの姉妹の映画のことを思い出してください。観てない人はすぐ観てください。

主人公は妹のほうです。姉とケンカした主人公は、姉の怒りを解こうとしてさらに問題をこじらせてしまいます。

その大喧嘩につけこんで、卑劣な悪人が二人を亡き者にしようと背後から忍び寄ります。

それに気付いた主人公は、自分の身を投げ出して姉を守ります。姉はその様子を見て感動し、主人公と和解します。

『破壊の対立軸』があの卑劣な悪人です。最後にお仕置きを受けてました。

一方、『和解の対立軸』はお姉さんです。長い姉妹ゲンカでしたが最後は姉妹愛が復活します。

そして、この物語のゴールはまさに「姉妹の和解」にあるわけです。

 

作者の決断が全てを決める

で、何をいいたいのかというと……

まずは、対立軸はどんな場合でも2つ設定するということです。

破壊型のストーリーか、和解型のストーリーかはどちらの対立軸を優先するかによって決まります。

どちらのタイプの物語であっても『破壊の対立軸』と『和解の対立軸』の両方を設定するのが大事なんです。

次に、『破壊の対立軸』は、主人公と『和解の対立軸』にとっての共通の敵であるという関係性に注意してください。

さらに、主人公が『和解の対立軸』と和解するためには、もともとお互いのことを心のなかで認め合っていなければなりません。

また、当たり前ですが、喧嘩しないことには仲直りが出来ません。

これらのさまざまな制約がプロットをダイナミックに突き動かします。

葛と藤のように絡み合う二つの対立軸が物語を編み上げる縦糸と横糸になっているわけですね。

読者としての分析ならここまででいいのですが、作者としてこの構造を使って物語を書くためにはさらに重要な事があります。

それは「決断」です。

姉妹のアニメ映画は『和解』がテーマになっています。つまり、製作者が『和解』をゴールにすると決めたわけです。

一方、少年ジャ◆プ型では『破壊』をゴールに選んでいます。

どちらを優先するのかは作者が決断しなければいけません。

つまり、物語のゴールとして『破壊』か『和解』かをあなたが選ぶ必要があるわけです。ここに正解はありません。というよりも、どちらを選んでも正解になり得るのです。

ただし、必ずどちらかをゴールにすると自己責任で決めなければなりません。これをはっきりさせないと、どっちつかずの物語になってしまいます。

これからあなたが書こうとしている作品は「破壊の物語」ですか? 「和解の物語」ですか?

頭を使って見極めましょう。

あなたのメッセージを伝えるためには、そして美学や世界観、あるいは素材やキャラに合うのはどちらか。

よく考えた上で決断する。

それが作者の仕事なのです。

 

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