娯楽を目的とする物語のテーマを決めるただ1つの条件とは?


エンタメ物語の創作は「読者に味わってもらいたい感情」を想定することから始まる。ただし、あれもこれもと欲張ってはいけない。1ストーリーに1テーマ。絞り込んで読者を集中させよう。

こんなご質問をいただきました。

「起承転結の構造についての質問です。起から承に移るタイミングは、主人公が事件に巻き込まれる切っ掛けと解説されていたように思ったのですが、それでは、

1.主人公がAという人物と出会う。
2.Aと徐々に友情を深めていき、やがて親友となる。
3.Aが行方不明になる。
4.Aを探すために主人公が行動を開始する。
5.障害が発生!

という流れにおいて、2番が重要な位置を占めるとき、それでも2番はまだ「起」の部分に含まれている、という認識で良いのでしょうか。それとも「事件」という字義を広く捉え、1番の「出会う」ことが「事件」であり、2番の「徐々に友情を深めていく」ことが展開部である、ということになるのでしょうか。となると実は3番ちょい手前にミッドポイントがあり、3番はミッドポイント後半の開始ということになりそうですが、うーん。 少し不安です。(Sさん)」

それではさっそくお答えしてまいりましょう。

1ストーリー1テーマ

さて、この物語は一言で言うと、

「主人公がAと友情を深めていき、やがて親友となる」話なのでしょうか?

それとも

「主人公が行方不明の友人を探す」ストーリーなのでしょうか?

なぜそんなことを聞くのかといいますと、この場合の最大の問題は、メインテーマを決めきれていないことにあるように思えるからです。

「1ストーリーには1テーマ」というのが物語作りの鉄則です。一句の俳句に入れる季語が一つであるようなものです。あれもこれも全部がメインテーマでは、まるで季語が二つある俳句のようになってしまい、イメージが混乱・分散する原因となります。

文学的に『テーマ』というと様々な定義があって分かりにくいので、対象を商業的な娯楽作品のみに絞ります。エンターテインメントを求める読者に味わってほしいのは「唯一極上のフィーリング」です。そこで、ここで言うテーマとは『読者に想起させたい感情』と解釈してください。

Sさんが読者に一番感じてもらいたいのは「真の友情を獲得する」場面の感動なのでしょうか? それとも「拉致された親友を奪還する」際に湧き上がる怒りなのでしょうか?

友情を獲得するストーリー

> 2.Aと徐々に友情を深めていき、やがて親友となる。

というのが最重要なのであれば、「友情の獲得」こそがメインテーマになります。映画『E.T.』なんかはそういう物語ですね。そこに決定的な悪は登場しないのです。

そうすると3以降は、「獲得した友情の厚さを確認する」ためと「クライマックスのエピソードとして何か派手なアクションがほしい」というエンタメ的な要請に従って作られることになります。

消えた親友を探しに行くことは、この物語の主人公にとって主要な目的ではなく、「E.T.における自転車チェイスのための理由付け」ぐらいの意味です。だから、ある程度、予定調和的な結末であることが大事です。

「主人公が親友を見つけ、変化する」というストーリーを作るのであれば、物語の3分の2の分量を占める『起』と『承』の全てを使って「二人の友情が深まるまでの話」をじっくりと描くべきでしょう。

そしてなんらかの『転』があって、「親友が拉致されて取り戻しに行く」というクライマックスに突入すればいいと思います。

友情を獲得するストーリーは本質的な構成としてはラブストーリーです。従って、無理に「敵のどんでん返し」を使うことはありません。ハナサカやアオトリなどの「目的のどんでん返し」を使うと作りやすいのではないかと考えます。

※参考記事

【目的】に仕掛けるどんでん返し「ハナサカ」

【目的】に仕掛けるどんでん返し「アオトリ」

また、その場合はむしろ「主人公がどう変化するか?」のほうが構成のカギになりますので、『主人公の成長』をしっかり設定することに力を注ぐべきでしょう。

親友を奪還するストーリー

一方、メインテーマが「拉致された親友の奪還」であるのなら『なぜその人と親友になったのか』という話はサブテーマです。

サブテーマにどのぐらいの文章量を割くかは別として、「親友になった経緯」はオープニングから『承』の始まりまでの中でさっさと処理してしまうべきです。

あるいは、逆にそのサブテーマを『謎』として読者の目から隠すという手もあります。その場合、1~2の要素はむしろ「承」の中の回想シーンで説明するといいと思います。

どちらにしても、できるだけシンプルに、主人公はのっけから「行方不明の親友を探す人」として登場するべきです。そして「事件のきっかけ」としては主人公自身が大変な状況に追い込まれることが重要です。

例えば、罠にかけられて警察に追われることになるとか。24時間後に爆発する首輪をはめられるとか。脱獄不可能とされる刑務所に収監されるとか。そして、その親友救出作業と並行して、「主人公はなぜ親友を探しているのか?」という謎が明らかになっていく。そんな構成にすると興味を持続しながら読んでもらえるでしょう。

また、親友が拉致されるわけですからそこには「悪」の存在が必要です。この「悪」の存在が、クライマックスシーンにおいて、主人公に大きく関係してこなければ、エピソードとして扱う意味はありません。

そのためには「誰が何のために親友を拉致したのか?」という設定がポイントになってきます。このあたりをじっくり練ることが必要であります。

復讐のストーリー

この質問では取り上げられていませんが、実はもう一つ、ドラマチックな動機として多用されるのが『復讐』です。日本人が大好きな『忠臣蔵』も、シェイクスピアの『ハムレット』も、『復讐』の物語です。おっと、藤子不二雄A先生の『魔太郎がくる!』も忘れてはいけませんね。

やられたからやり返す。大事なものを壊されたから相手の大事なものを壊す。仲間や家族を殺されたから犯人を殺し返す。二度と取り返せないものを失ったとき、人は絶望の中で怒りに身を任せます。

見事に復讐を果たしたときのカタルシスには大変なものがあります。しかし、どこかに虚しさが残るのが復讐物語の特徴です。いくら相手をやっつけても、失ったものは戻ってこない。そんな喪失の悲しみが常につきまとうのです。

しかし、それでも人は復讐の念に駆り立てられ、「仇をとる」という大義名分を掲げて、一途で孤独な戦いを始めてしまう……。この恨みはらさでおくべきか。そんな『復讐』は誰もが最も納得できる動機の代表格なのです。

メインテーマを明確に

ハートウォーミングな『友情』の話か? スリリングな『奪還』の物語か? はたまた宿命的な『復讐』の悲劇なのか? さあ、どれをメインにするかによってストーリー構成は大きく変わります。

エピソードの効率の良い連動性を考えるのなら、まずは最も大きなストーリーの流れから決めていかねばなりません。あれもこれも、ではなく、この物語ではまず何について語るのかを最終的に1つだけに絞りこんで考えてください。全ては『それ』の欠落から始まり、『それ』の獲得を目指して終わっていきます。

他に入れたい要素があったとしても、まずはメインテーマに沿った構成を優先して作り、その上でサブのテーマを乗せていくようにしましょう。

エピソードに優先順位を付ける。そして最高順位のものを『メインテーマ』とする。他のエピソードはメインテーマを生かすために選ぶ。

そのルールを先に決めることで、作る側にとっても読む側にとっても分かりやすいストーリーになるのです。くれぐれも欲張らないように。1ストーリーは1テーマに絞り込んでください。

獲得か? 奪還か? それとも復讐か?
あなたらしい動機を持った物語を作りましょう。

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