怖い話が書けなければ他のジャンルもまず無理だという怖い話(笑)


ホラー小説の世界は広大である。単なる絶叫スプラッタや学校の幽霊譚ばかりを想像していると人生の大きな喜びを逸する。本物の恐怖とはあなたの想像力そのものなのだ。

こんなご質問をいただきました。

最近、ホラーというジャンルに興味が湧いてきました。ですが今まであまり挑戦してこなかったジャンルなので、知識がそれほどありません。ホラーのどんでん返しタイプは、全てのタイプで応用できますか?? スティーブンキングなどの小説も読んだ事がないので読みたいのですが、もしよろしければ強力なオススメを教えて頂けないでしょうか?

実はですね、ホラーというのは、ラブストーリーと並んで『どんでん返し』がなくても面白くなってしまう困ったジャンルなのです^^;

もちろんぴこ蔵流どんでん返しは全タイプ使えますけど、やはりホラーの醍醐味というのは『次の角を曲がったら何かが待ち伏せしている』みたいな、問答無用の『直接的な怖さ』であるワケです。イントロで不安な気持ちにさせ、オチでキャーッと言わせた人の勝ちなのです(笑)本質がシンプルなだけに構成力の有無が問われます。修学旅行やキャンプで体験している通り、人が集まった時に盛り上がれる物語の基本中の基本は『怪談』です。怖い話が上手くなければその他の面白い話が語れるはずがありません。

S・キングには『秘密の窓、秘密の庭』みたいなどんでん返し付きの面白い作品もありますが、それがキングらしいかと言うとやはり違います。

何と言っても『呪われた町』『IT』『ペット・セマタリー』『ザ・スタンド』『シャイニング』等、読みながら眠りに就くともれなく悪夢が付いてくる、黄金期の長編がおすすめです。

ちなみに長編で私が一番好きなのは『クリスティーン』の怖くて切ない恋です。

キングの中篇・短篇は本当に何を読んでも素晴らしいのですが、ホラーだけでなく『刑務所のリタ・ヘイワース』や『スタンド・バイ・ミー』『アトランティスのこころ』などの感動作も絶品です。とくに『グリーンマイル』は名作です。いい年こいて号泣しました。ホラーが苦手なあなたもぜひお読みください。後悔させません。

キングについてはまだまだとてもここでは紹介しきれませんので、とにかく見つけたら手当たり次第に読むといいでしょう(笑)入りやすいのは『ファイアスターター』とか『ゴールデンボーイ』とか『とうもろこし畑の子供たち』とか、子どもが登場するホラー。中でも一番怖いのは『ペット・セマタリー』でしょう。そして最高傑作はやはり『IT』だと思います。ちょっとひねったゾンビものとしては『セル』の荒涼とした世界観がたまりませんでした。

キングは子どもを書くのが非常にうまいのです。マーク・トウェイン以来のアメリカの伝統を感じます。

キングの話ばかりしていてもアレなので、他の作者も少し。サスペンス・ホラーの御大であるディーン・クーンツ。ベストセラーは多々ありますが、私のイチオシは『オッド・トーマスの霊感』に始まるオッド・トーマス物4部作(ハヤカワ文庫)。これらにはホラーなのに素晴らしいどんでん返しが入っていて感動しました。

また、最近の出色である『WORLD WAR Z』(M・ブルックス/文春文庫)、『ジャクソンビルの闇』(ブリジット・オベール/ハヤカワ文庫)などは一風変わったゾンビものとして楽しめました。

ホラーの短篇集としては、ロバート・R・マキャモンの『ブルー・ワールド』(文春文庫)、ジョー・ヒルの『二十世紀の幽霊たち』(小学館文庫)が非常に良かったという印象が残っております。

ホラーではありませんが、終末世界旅行モノとしてコーマック・マッカーシーの『ザ・ロード』(ハヤカワepi文庫)が非常に良かったです。ほぼ父と子しか出てこない話なのですが、時々ちらちらと顔を覗かせる悪人どもの鬼畜な所業が土下座級にダークで……。とても満足しました。

どうやら私には自己懲罰の衝動があるようで、テキーラを飲むと道路で土下座したくなるのですが、読書にも同じ傾向が見られます。読んでいてげんなりするような世界であればあるほど、そんなものにハマっている下衆なオノレを反省し、ゾンビがいない社会に住んでいることに感謝し、ただただ善良で建設的で素直な気持ちになれるのであります(笑)

闇の世界を徘徊する異形の者たちに対して、本当に私が悪うございましたと、ひたすら謝罪するのであります。いやあ、晴れ晴れしますな(笑)

何のオチも結論もない話になってしまいました。すみません。でも、趣味を語るとこうなるのは仕方ないのであります。好きだってことは最大の創作モチベーションですしねえ。あなたもご自分の趣味嗜好を最大に生かした楽しい物語を作ってください!

ただし、好きな世界のディテールを安心して描き込むためにもいれものとなるストーリーはしっかり構築しましょうね。

今回はホラー小説、しかも海外モノ限定の紹介文となりましたが、次はいつか「私の好きな娯楽小説」ミステリー編やSF編をやりたいと思います。

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