ちょっとユニークな往還記を読みたいなら『航路』

コニー・ウィリスの『航路』は、一生を彩るさまざまな旅の中でも、最後の最期に行くことになる最長の旅行である「死出の旅」をテーマにした小説です。

SFなので亡者が地獄めぐりをする話ではありません。アプローチはあくまでも科学的。素材として使われるのは『臨死体験』です。

ヒロインは認知心理学者のジョアンナ。NDE(臨死体験)の原因と働きを科学的に解明するべく、小児科から緊急救命室まで、迷路のような大病院を駆け回ります。

臨死体験は主観的な経験なので、体験者の記憶がどんどん変容してしまうため、聞き取り調査は急がなければならないのです。

しかし、その病院で臨死体験した患者たちはいずれ劣らぬ変わり者ばかり。なかなか有意義なサンプルデータが取れないため、このプロジェクト事態の存続が危うくなります。

そこで出会ったのが、臨死体験を再現できる薬物を発見したドクター。ジョアンナは彼と協力して、自らが臨死体験をすることになります。

ところが、思いもかけないことに、彼女の意識が体外離脱状態で訪れた場所は、なんとあの有名な……。 続きを読む

『AKIRA』の対立軸、『百鬼夜行抄』の切り札 など

「やっぱり名人の手になる作品は違うなあ」とつくづく思った漫画を2つご案内します。

1つは超メジャー・大友克洋の『AKIRA』(講談社)、もう一つは今市子の『百鬼夜行抄』(朝日ソノラマ)です。

『AKIRA』 ~対立というエンジンに注ぐ燃料は何か?

私がコピーライターになりたての頃、『AKIRA』の単行本が発売されました。

私はそのラジオCMを作るという僥倖に恵まれ、それまで一番好きだった漫画である『童夢』をもしのぐ迫力とスピード感を客観的に伝えるすべを模索しました。

学生の頃から大友作品の大ファンだった私は、大好きなキャラクターたちへの感情移入を涙ながらに抑制しつつストーリーの論理的な構造を冷静かつ客観的に掴むというある意味で非常に責任重大な仕事をすることになりました。

光栄至極でしたが、正直ビビリました。俺なんかがやっていいのか? 続きを読む

怖い話が書けなければ他のジャンルもまず無理だという怖い話(笑)

ホラー小説の世界は広大である。単なる絶叫スプラッタや学校の幽霊譚ばかりを想像していると人生の大きな喜びを逸する。本物の恐怖とはあなたの想像力そのものなのだ。

こんなご質問をいただきました。

最近、ホラーというジャンルに興味が湧いてきました。ですが今まであまり挑戦してこなかったジャンルなので、知識がそれほどありません。ホラーのどんでん返しタイプは、全てのタイプで応用できますか?? スティーブンキングなどの小説も読んだ事がないので読みたいのですが、もしよろしければ強力なオススメを教えて頂けないでしょうか?

実はですね、ホラーというのは、ラブストーリーと並んで『どんでん返し』がなくても面白くなってしまう困ったジャンルなのです^^;

もちろんぴこ蔵流どんでん返しは全タイプ使えますけど、やはりホラーの醍醐味というのは『次の角を曲がったら何かが待ち伏せしている』みたいな、問答無用の『直接的な怖さ』であるワケです。イントロで不安な気持ちにさせ、オチでキャーッと言わせた人の勝ちなのです(笑)本質がシンプルなだけに構成力の有無が問われます。修学旅行やキャンプで体験している通り、人が集まった時に盛り上がれる物語の基本中の基本は『怪談』です。怖い話が上手くなければその他の面白い話が語れるはずがありません。
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