ドラマとは葛藤のことである

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ブンコ
「さて、ぴこ蔵師匠、ストーリー作りの一番最初にやるべきことはどんでん返しの作り方を覚えることって言ってたよね? 早速教えて!」

ぴこ蔵
「あせるな。まずはその『どんでん返し』の構造を理解するために面白い物語はどうやって出来ているのかを見てみよう!」

ブンコ
「えっと、面白い物語って例えばどんなの?」

ぴこ蔵
「まず、その逆を考えてみようか。『誰も楽しめない話』があるとすれば、それは例えば、朝礼の時の校長先生の長話じゃ」

ブンコ
「げっ、それ聞いただけでもう貧血気味だ!」

ぴこ蔵
「退屈じゃからなー。サスペンスもないし、ロマンスもない。大体結論もわかっておるし、ギャグも言わん」

ブンコ
「その上、お説教されるんだもんなー」

ぴこ蔵
「この手の話と対極にあるのが「面白い物語」じゃな。ドキドキはらはら、次はどうなるの? あの人は誰のことを愛しているの? そんな一瞬たりとも気が抜けない話じゃ。手っ取り早く言ってしまえば、それは『ドラマチックなストーリー』のことじゃな」

ブンコ
「ドラマチックって具体的にどういうこと? どうすればドラマチックになるのさ?」

ぴこ蔵
「小説とかシナリオの書き方を解説した本を読むと、『ドラマとは葛藤である』と書いてあるのをお主もよく目にするはずじゃ。つまり、物語をドラマチックにするためには『葛藤』とやらを持ち込めばええのじゃ」

ブンコ
「『葛藤』とか言われたって全然わかんないよー。画数の多い漢字を見ると、頭がぼやーっとしてくるんだよねー」

ぴこ蔵
「そうか。するとお主、『主人公の成長や変化の過程における葛藤を書け!』なんて言われると頭がフリーズしてしまうじゃろな」

ブンコ
「もうサイアクー! なんか葛藤って夏休みの朝顔観察っぽいよねー」

ぴこ蔵
「いいところを突いたぞ!ちなみに辞書を引いてみると…

【葛藤(かっとう)】
〔もつれ合う葛(かずら) や藤の意から〕
(1) 人と人とが譲ることなく対立すること。争い。もつれ。
(2) 〔心〕 心の中に相反する欲求が同時に起こり、そのどちらを選ぶか迷うこと。コンフリクト。
(3) 禅宗で、解きがたい語句・公案、また問答工夫の意。

まさしくもつれあうツルとツタのことじゃ。ありゃりゃ、禅問答まで出てきおったぞ。葛藤と言う概念はどうも抽象的で扱いにくいんじゃのう」

ブンコ
「葛藤ってさー、意味ぐらいはわかるけど、視覚的にイメージしづらい言葉だよね。なーんか4畳半で一人ぐじぐじ反省するって感じだし」

ぴこ蔵
「確かに葛藤のヴィジュアルはなかなか思いつかんなあ」

ブンコ
「だいたい、主人公が葛藤する様子なんてどうやって描写すればいいのさ? 髪の毛をかきむしりながら独り言でもゆーのか? 口元をゆがめて手も少し震わせてやろーかなー。違うなー。そーゆーことでもないなー。

ポーズかな? 腕を曲げて腰に当ててクイクイッと。そんな葛藤はやだなー。こりゃいかん。無理だ無理だ。あたしに主人公の葛藤なんて描けないよ。老師、またしても頭がぼやーっとしてきた」

ぴこ蔵
「それは、一人で葛藤すると思うから難しいんじゃよ。心理描写しようなどと思ってはいかんぞ。ありゃつまらん。エンターテインメントで「内部の葛藤」は止めたほうがイイ。特に、映像化を考えておるのならおすすめできん。名手ならともかく、おぬしがやっても読者に迷惑かけるだけなのじゃ。

こんな時、よいこは頭を使うのじゃ。例えば…人と人とが争う様子を書くのはイメージしやすいじゃろ? 内面の葛藤も擬人化すればいいのじゃ。誰か主人公が葛藤する相手を登場させればいい。考え方をこう変えてみるのじゃ!

「ドラマとは主人公の葛藤から生まれる」
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「ドラマとは主人公が他の登場人物と葛藤することで生まれる」

ブンコ
「うーん、まだ「葛藤」の意味がわかりにくいな」

ぴこ蔵
「ならば、お主にもわかりやすい言葉に置き換えてみよう。

それは辞書の中にも出てくる「対立」という言葉じゃ。すると、こうなる。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「ドラマとは主人公が他の登場人物と対立することで生まれる」

ブンコ
「なるほど! ってことはつまり、手っ取り早く話をドラマチックにしようと思ったら主人公を登場人物とケンカさせればいいわけだ。でも、ホントかなあ?」

ぴこ蔵
「葛藤とは、簡単に言えば、異なる意見の中で自分の考えが選択に悩むことである。具体的に言うとこういう例が考えられる。登場人部は主人公と友達。二人で歩いていると主人公が落ちていた財布を拾う。葛藤のポイントはこの財布を交番に届けるか否か。ここからは会話じゃ。


主人公「おいおい、二万円も入っているぞこの財布」

友達「ふーん、でどうすんの?」

主人公「なんかうまいもん食って、欲しかったゲームソフトでも買うか」

友達「これだからゲスなやつとは付き合いたくねえんだよな。お前のやろうとしていることは最低レベルの犯罪だ」

主人公「なんだよおまえ、もしかして交番に届ける派?」

友達「あたりまえだよ。そうすれば半年後に合法的に2千円が手に入る。ノーリスクでだ」

主人公「それって逆にいやらしくない? 正義とはそんなことでいいのか」

友達「泥棒に正義を語られたくないね。さあ、とっとと交番に行くのだ。キリキリ歩け!」

主人公「全然釈然としないけど、まあそういうもんかな。でもな、2千円入ったとしてもお前には奢らないからな」


まあ、こんな感じであろう」

ブンコ
「なるほど、一人で迷うより伝わりやすいし、会話にすればそれだけで面白いね。でも、なんか難しくないかな。私にもできんのかな」

ぴこ蔵
「コツとしては、うまく会話がはずまないところを思い切ってちょっとケンカ腰の会話にしてみることじゃ」

ブンコ
「どんな感じかやってみてよ」

「対立」は物語のエンジン

ぴこ蔵
「それでは『対立』の実例として「会社に遅刻したOLと上司との会話」を書いてみよう。ただし、ポイントとして『この会社では電車の事故で遅れた場合は証明書が必要』ということを絶対書かなければならないと決めておこう。

ま、対立を避けて平穏に会話するとこんな感じじゃろう」


上司「おや、どうしたの? 遅刻?」

OL「すみません! ちょっと忘れ物して1本遅いのにしたら今度はその電車が事故で遅れてしまって…」

上司「30分ね。まあしょうがないよね。たまにはこんなこともあるさ」

OL「何か証明する書類とか提出したほうがいいですか?」

上司「事故のせいだし僕は別にいいんだけどさあ。ただ最近ちょっと管理の件で上がうるさくってね、ま、念のためってことで、悪いけど駅で証明書もらっといてよ」

OL「はい、わかりました。お昼休みに行ってきます。申し訳ありませんでした。以後気をつけますから」

上司「はいはい。よろしく」


 

ブンコ
「なんかこんな会話、別に書くほどのもんじゃないですよね」

ぴこ蔵
「どうやってもこれ以上はふくらまないしな。そこで、軽くギャグ風に対立させるとこうなる」

 


上司「おい、遅刻してきて挨拶なしか?」

OL「だって電車の事故ですから」

上司「こっちは別に電車で来てくれって頼んだ覚えはないぞ」

OL「じゃあタクシー代、課長が出してくれるんですか?」

上司「そういうことを言ってるんじゃないだろ!」

OL「わかりましたよ。駅で証明書もらってくればいいんでしょ」

上司「なんだよお前、態度悪いぞ」

OL「お前なんて言わないで下さい。私は課長の奥様じゃないんです。まあ、奥様にはお前なんて言えないと思うけど」

上司「言ってるよ」

OL「あら、じゃあこないだの飲み会でセクハラしたこと奥さんにはまだバレてないんですねえ」

上司「あ、それは違うんだ。誤解、誤解なんだよ」

OL「フン」


ぴこ蔵
「ちょこっと対立させるだけでテンションが上がる。読者も「おや?」と集中するし、伝えたい情報の他に「次はどうなる?」の要素が入ってくる。つまり、いろんな情報が隠しやすいのじゃ」

ブンコ
「情報を隠すってどういうこと?」

ぴこ蔵
「例えばこの『駅で証明書をもらう』というのが重要な伏線だとする。ところが、この時点では読者にそのことを気づかせたくない。そんな時、OLと上司の関係に目を向けさせてしまえば読者の意識はそちらに流れてしまうのじゃ」

ブンコ
「実例だとよくわかるねー。退屈になりそうな部分には「対立関係」を持ち込むと緊張感も出るしテンポもいいし。登場人物のキャラも立ってずいぶん面白く説明できちゃうんだなー…」

ぴこ蔵
「ドラマとは主人公が他の登場人物と対立することで生まれる。さて、それでは主人公は、いったい誰と、何のために対立するのじゃろうか? 実はそこには、お主の物語を一気に走り出させるための『物語のエンジン』が隠れているのじゃ!」

ブンコ
「ドラマとは、主人公が他の登場人物と対立することで生まれる。…なるほどなー!」

 

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