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物語を動かす悪の動機

物語を突き動かす「悪」の動機~悪を生み出す6つの「欲望」とは?

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物語の登場人物が行う全ての行動には理由があります。中でも特に重要なのが「悪事」とその動機。

「善なるもの」ばかりを書いていても「面白い物語」にはなり得ません。エンタテインメントにおいては「悪事」は華その「悪」を生み出すものは「欲望」です。強い欲望こそがストーリーに命を与え、前に進める推進力を生み出します。

そこでこの講座では、その「欲望」を解明するために、「欲望」が人の心に忍び込むための隠れ蓑として利用する「人間の欲求」についてまず考えます。

心理学者マズローの学説が、あなたの物語の登場人物に悪の刺激を与えてくれることでしょう。ぐっふっふ。
いざ目を覚ませ、心の中のモンスターたち!

マズローの欲求段階

物語の上で起きる事件には「動機」が必要です。というよりもむしろ「動機」こそが事件を生むのです。そして、あなたの物語に「人間性」を与えるのは、まさにこの「動機」です。読者が衝撃を受けながらも納得できる動機を見つけたとき、あなたの物語の登場人物は実在の人間を超えるのです。

そんな「動機」を生むのは「欲望」です。そしてその「欲望」が模倣するのが人間が本来持っている「欲求」です。「欲求」はアクションのきっかけとしては非常に使いやすい要素です。

しかし、ご注意ください! 「欲望」と「欲求」は似ていますが明らかに違うものです。

「欠如しているがゆえにそれを必要とする行為」が「欲求」であるのに対して「欠如とは関係なく欲しくなる行為」が「欲望」です。

「欲求」は生命維持の為に必要なものを手に入れる本能です。喉が渇いたから水を飲みたくなったり、空腹だからメシを食べたくなるので、特殊な場合を除いて善悪とは関係ありません。

一方「欲望」は人間の関係性から生まれます。「隣の芝生が青い」というだけで欲しくなります。「友達の彼氏だから」という不条理な理由で誘惑してみたくなるのです。他人の幸福を模倣したい。それが「欲望」の正体なのです。それがために非常に複雑で、その対象は多岐に渡ります。

注意すべきなのは「欲望」が「欲求」のシステムを真似して私たちの意識を騙して行動させるところにあります。「これがなきゃ死んじゃう!」と思ってしまうわけですが、実はそんなものなくたって死にゃしないものがほとんどなのです。

人間を描くために、私たちは「悪の動機」である「欲望」の尻尾をつかむ必要があります。そこで、まずは「欲望」がモノマネする「欲求」についてしっかり認識することが重要です。

「欲求」の研究者、アブラハム・マズローの非常に有名な研究成果を紹介します。

ぜひ、あなたの物語に応用してください。

マズロー(心理学者 1908~1970 アメリカ)

Maslow, Abraham H.

欲求階層説

マズローは人間の欲求を5段階に分類。人間は低次の欲求が満たされると、高次の欲求を満たすように動機づけられているとした。

1.生理的欲求:食欲、睡眠欲、排泄欲など生存に関わる基本的欲求
2.安全・安定の欲求:安全、住居、衣服など
3.社会的欲求:集団に属したり、仲間に受け入れられたりすること
4.自我・自尊の欲求:尊敬されたい、名声を得たいなど
5.自己実現の欲求:自己の能力を発揮して目標を達成すること

本講座では、これにさらに

6.自己超越の欲求:現状の自分の限界を超える

という説を加えて、以下の6つの欲求段階から「動機」となる欲求を選ぶことにします。

※あくまでも「ストーリー作り」のためにまとめたものです。純粋なマズローの理論そのものとは微妙に異なる点があるかと思われます。従って、学生諸君は試験勉強にはこのまま使わないほうがいいと思いますぞ(笑)

人間の行動の原点である「欲求」(マズローの欲求段階より)

生理的欲求
★サバイバル
★食欲や性欲及び睡眠・排泄・空気・庇護・睡眠への欲求、
金銭欲や、俗にいう物欲など、人間が生きる上での根源的な生理的欲求

安全の欲求
★安心と安全
★自分の身を守るための住居、衣服など、

安全・安定・依存・保護・秩序に関わる欲求

親和の欲求
★愛と帰属意識
★家族の中に居場所が欲しい、愛されたいなど、

自分を暖かく迎えてくれる集団や人を求め、他人と関り、他者と同じようにしたいという集団帰属の欲求

自我の欲求
★尊敬と自尊
★地位や名声を得たいなど、

自尊心を満足させ、自分が集団から価値ある存在と認められ、尊敬されることを求める認知欲求

自己実現の欲求
★自分がなりたいものになりたい。

自らの才能や能力を開花させ、目標を達成したい。
自分の能力、可能性を発揮し、創造的活動や自己の成長を図りたい。
などの欲求

自己超越の欲求
★知識欲と理解欲
★審美的欲求
★調和や絶対的な秩序、偉大なるものとの結びつきを求める。

神になりたい、限界を超えたい、今までや現状の自分自身を超えたいという欲求

以上の「欲求」を模倣して巧みに人の心に忍び入るのが「欲望」です。作者はここをしっかり認識していないと単なる「欲求」だけで「悪」を語ることになりかねません。

「欲望」と「欲求」。この「差異」を嗅ぎ分けることがあなたの物語に深みを与えることでしょう。

 

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主人公の成長戦略

8つのポイントから考える「主人公の成長」戦略

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主人公を成長させたければ、その成長の証拠を具体的な行動で読者に見せなければならない。

1. 成長とは何か?

「成長」とは、時間の経過と共に能力が高まり、かつて出来なかったことが出来るようになることです。

つまり、「昔」の主人公に足りなかった能力を、「今」の主人公は身につけていなければなりません。「オープニング」にはとても無理だったことを、「クライマックス」では達成しなければならないのです。

2. 成長の三大要素

それでは人間の成長にはどんな能力が必要なのでしょうか?

現実の人間は複雑ですが、ここではあくまで物語上での効率を考えて、キャラクターの3大要素とされる思考(判断力)・行動(決断力)・感情(喜怒哀楽)の3つの能力に分類しました。

▼思考「こだわり、信念、信仰、美学など」
・哲学
・価値観
・態度
・見識

▼行動「決断・選択の能力、勇気など」
・行動そのもの
・行動への意思決定

▼感情「喜怒哀楽&恐怖など」
・感情的反応
・感情的気質

この3つの能力をわかりやすい言葉に置き換えると「知恵」「勇気」「人間性」ということになります。

まずはイメージして欲しいのですが、あなたの主人公は物語が終わったときに、どんなタイプの人間となっているのでしょうか。

あなたの理想とする主人公像は「どんな難解な謎も解き明かす、頭のいい人」なのか?

「いかなる危険も恐れない、度胸の据わった人物」なのか?

「一度会ったら誰もが好きになる、人間味にあふれたひと」なのか?

さあ、さっそく主人公からこの3大要素のうちのどれかを奪い取るべし! すると、成長前の主人公は、例えばこんな感じになります。

「信念」の欠けた政治家。
「行動」を奪われた刑事。
「感情」を失った音楽家。

そんな彼らが「力」を取り戻そうとする時、ほら、何かが起こりそうな予感がしてくるでしょ。

3. 精神的な成長でなければダメ

よくやる失敗例として、特訓や偶然、あるいは絶対者からの贈り物など、「外部からの干渉」によって成長させようとする試みが挙げられます。

これには結局、「成長」のための真の効果はありません。特訓シーンに面白いエピソードがある、という場合ならともかく、特訓すれば主人公が強くなるだろうというなあなあの設定では読者は決して納得しないことを知っておくべきです。

なぜなら、「成長」とは即ち「人間としての成長」「心の成長」だからです。「筋肉の成長」や「暗算力の成長」ではないのです。

ハードな訓練の場面を描くならむしろ、「主人公に不足している能力」を露呈させるために描くべきであり、挫折の場面であり、問題点を明示するシーンとして認識すべきです。

絶対者からの素敵で特別なプレゼントはどうでしょう?

藤子不二雄の名作漫画「パーマン」を見てください。普通の小学生が、ある日、空を飛ぶ能力や怪力を手に入れる話ですね。

しかし、超能力の贈り物の果てに主人公が見出すのは、そのギフトに見合う責任とノルマであり、己の限界と絶望なのです。

パーマンは、義務を果たすために今日もパトロールに出かける。一方では相変わらず学校の宿題もこなさねばならず、消耗しきっている。挙句に宿題をコピーロボットにやらせようとする。ズルいぞパーマン!

▲教訓▲「主人公の成長」は、決して外部からの干渉では達成できない。

4. 成長させるために奪え!

それでは具体的にどうやって成長させればいいのでしょうか? それが意外に簡単なのです。主人公のイメージが決まったら、そのイメージに程遠い人物像を造りましょう。

そのためには、まずオープニングで主人公からその『理想像』の最大の魅力を奪い取ってください。

「頭のいい人」からはその「知恵」を。「度胸のある人」からはその「勇気」を。「人間味にあふれた人」からはその「人間性」を。

そして、物語が進むにつれ幾多の試練を経たあなたの主人公は、あらかじめ失われていた魅力を取り戻し、理想像に近づいていく。

お馬鹿さんは深く考えるようになり、臆病者は度胸を身につけ、冷酷だった人は泣き、笑い、愛するようになる。まさにそうなった時、読者は感動を覚えるのです。

さて、それでは、その具体的な「成長の方法」を説明しましょう。

5. 行動しないと伝わらない

主人公の内面を行動で表わすのはけっこうむずかしいもの。間違っても「その時、マサルの心の中に勇気が生まれてきた」とか「優子の頭の中の霧が晴れていった」とか書いてはいけません。

現代においてエンタテインメントなストーリーを作るのならば、当然、物語の2次利用、3次利用まで考えておくべきです。

小説として書いていても、将来的には映画やドラマ、ゲームなどに転用されていくことを計算しておかねばならないのです。そのためには一にも二にも「絵になる行動」を作ることです。

「小説は意識を描写するものだから」というのは今やエンタテインメントを志す者にとって危険な考え方です。そんな都合のよい言葉に甘えて、行動を描くことを怠れば、それは即ち、作品の映像化の機会を失うことに直結します。

また、ことさらに映像化を前提にしなくても、こういう説明的な叙述が、読者の感興を削ぐことはあっても登場人物の内面を決して伝えられないことを知っておくべきです。

6. 共感を生み出すには

読者に共感してほしければ「想像」させることです。そのためには「主人公が実際に行ったこと」だけを描き、その心理は推して知るべし、という方法を取るべきです。

行動の内容とそれを導く状況がしっかり提示されていれば、読者は自分自身の経験から、むしろ容易にその心理を読み解くものです。

7. 「行動」を引き出すための選択肢

「行動」とそこに到る「決断」をわかりやすく伝えるためには『選択』させる、という方法を使うと簡単です。これなら主人公がやるべきことはたったひとつ。二つの「行動」からの二者択一でいいのですから。

その二つの「行動」が、説明の必要がないほど明確に主人公の気持ちを代弁するものであれば、さらに良いですね。どっちを選ぶか? に集中すればよいのでこれなら、読者も他の事に気を回さずに済みます。

8. 「選択肢」の作り方

そんな『選択肢』を作るときは、クライマックスから逆の順番で発想していくのが秘訣。

STEP1. まずは主人公が出会う危機をイメージする。

STEP2. そして、その危機を脱するために必要なものとは何かを考える。

この時、(知恵/勇気/人間性)のどれかから選ぶと発想しやすい。

STEP3.  次に、それでは今選んだ要素の対極を考える。

(知恵であれば無知、勇気なら臆病、人間性なら非情さなど)

STEP4.  そのペアになった2つの要素を「具体的な行動」として表現する。

※例えば「知恵と無知」というペアを
●主人公が難しいクイズに正解する
●主人公は難しいクイズに不正解する
などという「行為・行動」に置き換えてみるのである。それが選択肢となる。

選択肢が出来たら、まずはクライマックスの筋書きを考えよう。特に重要なのは、主人公が危機を脱するくだりである。

STEP5.  大ピンチを迎えた主人公は、危機を脱するために(STEP4)で作った選択肢から正しい方を選択する。

STEP6.  そしてクライマックスで主人公が危機を脱する場面を作る。

STEP7.  クライマックスが出来たら、次に物語のオープニングを作る。

STEP8.  できるだけ物語のはじめの方で、主人公に選択肢を選ばせる。

オープニングの1行目からでもかまわない。

STEP9.  この時、主人公が選ぶのは、クライマックスで選択する行動とは別の方の選択肢である。

順番が逆行していることに注意して欲しいが、「オープニングでは、クライマックスで選ばなかった方の行動を選択する」のである。

こうして出来上がったオープニングとクライマックスを、読者が本来読む順番に組み立てなおしてみましょう。

すると、そこには、「未成熟だった主人公が成長する」道筋が明確に表現されているはず。

最初は誰もが子どもだったのです。子どもはみんな未熟です。だからこそたくましく成長する余地もあるのであります。

あなたがもしも物語の中で、愛する主人公を傷つけまいとして最初から完璧な人間にして登場させると、逆に後から余計な苦労を背負い込むはめになりますよ。フラッシュバックによる回想シーンなどで、成長前の主人公をどうしても描く必要に迫られるのです。

うまくやれば少しぐらいなら許されますが、基本的には……ウザイですよね、フラッシュバックって。特別に回想の雰囲気を出したいなど、はっきりした目的がなければできれば使いたくないワザのひとつです。

例外としては、オープニングで読者を引き込むために、まず強烈なアクションシーンから入ることがあります。その後で、なぜその場面に至ったかを説明するために「主人公の回想」を使うことがあります。構成を前後することによって読者の心を掴む基本テクニックです。

それ以外で使われる回想シーンは構成の失敗による安易な後付けであることが多いようです。何度も過去を説明的にフラッシュバックするぐらいなら、最初にその場面から始めて伏線を敷けばいいのにと私は思います。せっかく「へえーっ」と言わせるチャンスなのに。もったいない。

主人公を愛するのは自由ですが、何のための登場人物かを考えないと、読者にとってはとても共感できない人物になってしまう。思い切り突き放して試練を与えるのが本当の親心なのです。

まず作者のほうが大人になりましょう。すると、不思議なものでキャラクターのほうも自立する。いわゆる「キャラクターが自分で動き出す」という現象が起こります。

創造の神が降臨して、神秘の一撃をぶちかまし、作り物のイメージに命が宿る瞬間であります。なんだか子育て論みたいになりましたが、物作りの幸福はここにあると思います。いかがでしょうか?

*************<例>*************
(STEP1) まず、クライマックスとして「敵と戦うシーン」をイメージしたとしよう。

(STEP2) 主人公を「勇気ある人間」として描きたい。そこで、「敵と戦うシーン」では「仲間のために自分の命を賭ける主人公」を見せたい。

(STEP3) そこで、その対極として「死に怯える臆病な主人公」を考える。

(STEP4) その2つをペアにして具体的な行動で表現すると…

[1]仲間を守るために囮となって敵をひきつける主人公
[2]仲間を見捨てて真っ先に逃げ出す主人公

以上の2つが「主人公の成長」を表現するために必要な『選択肢』となる。

(STEP5) まずは第2の選択から。クライマックスで、危地に陥った主人公は[1]仲間を守るために囮となって敵をひきつけるという行動を選択する。

(STEP6) その行動によって主人公と仲間は危機を脱するという展開にする。

(STEP7) クライマックスが出来たら、物語のオープニングを作る。
読者を引き込むために、主人公の戦闘シーンから始める。

(STEP8) オープニングの1行目から主人公は危険に直面しており、
[1]仲間を守るために囮となって敵をひきつける
[2]仲間を見捨てて真っ先に逃げ出そうとする

以上の選択肢から行動を選択せざるを得ない状況にいる。

(STEP9) この時、主人公が選ぶのは、クライマックスで選択する行動とは別の方の選択肢。つまり…

[2]仲間を見捨てて真っ先に逃げ出そうとする

である。この選択により主人公の臆病ぶりを提示する。

「最前線から怯えて逃げ帰る主人公」を描いておくことにより、後日の成長ぶりをより印象的に読者に伝えることができるのだ。

さあ、これであなたも主人公の親?

 

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主人公の成長

読者に感動を与えるために主人公が行うべき秘策とは?

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主人公は変化・成長しなければならない

なぜなら、それが人間を描くことだからであり、感動の焦点だからじゃ。ここでは、具体的に何を書けば「主人公の成長」を表現できるか? について研究している。コツは「選択肢」にあった。

主人公の成長

ぴこ蔵
「さて、物語に『魂』を注入するとしよう。つまり「テーマを表現する」ということじゃ」

ブンコ
「えーっ? そんなこと考えてないよー」

ぴこ蔵
「考えていなくとも、物語である限り自然に備わっているものじゃ。中でも「主人公の成長」を明確に描くことは読者に感動を与える大事なテーマの一つじゃ!

ただし、ここで気をつけたいことがある。成長するためには、主人公が「行動」することが重要なのじゃ。しかし「行動」で表わすというのは実はけっこうむずかしくて、“具体的に何をすればいいのか分からない”という場合が多いのじゃよ。

そこで、ここでは手っ取り早く「選択」という方法を使うのじゃ。あらかじめ、主人公が取るべき行動を2つの選択肢にしておいて、主人公に「選択」させるわけじゃな。

その選択肢は「テーマを表現するために主人公がしなければならない行動」とは何かを考えることによって作り出せるのじゃ。そして、この選択は2度行われなければならない」

ブンコ
「へっ? 2度? どーして?」

ぴこ蔵
「『最初の選択』と『第2の選択』で同じような内容の選択肢が提示され、主人公はそれぞれ違う選択をする。最初は未熟な思考によって誤った選択をする。2回目は何事かに開眼して見事に正解を選択する。そのことによって主人公の「成長」を明らかにするわけなのじゃ。

応用としてわざと同じ選択をすることで「成長」を見せるという、読者の予想の裏をかくひねりを効かせた高等テクニックもあるが要はさまざまな意味での成長を具体的に例示できればよい」

ブンコ
「つまり、主人公に同じようなシチュエーションで2回、次に起こす行動を選択させるわけだなー。で、1回目の選択はいつやればいいの?」

ぴこ蔵
「できるだけ最初の方じゃ。オープニングでもかまわん」

ブンコ
「どんな選択肢を作ればいいの?」

ぴこ蔵
「主人公の性格を説明し、その未熟さを表現するために、ストレートに欲求を表わす選択をさせるのじゃ。例えば『主人公は空腹を感じたのでパンを盗んで食べた』みたいな」

ブンコ
「それじゃあ、2回目の選択はいつやんの?」

ぴこ蔵
「これはちょっと難しいぞ! 物語の後半で、どんでん返しが起こった直後じゃ。このタイミングで1回目の選択とは逆の選択をするのじゃ!」

ブンコ
「逆ってつまり、食べたパンを吐き出して空腹になるってこと?」

ぴこ蔵
「違うわいっ! 空腹でもパンを盗んだりしないということじゃっ!」

ブンコ
「なんだ、簡単じゃん」

ぴこ蔵
「そして、実はここでもうひとつ注意点があるのじゃ」

ブンコ
「まだ~?」

ぴこ蔵
「なぜ2回も選択する必要があると思う?」

ブンコ
「だから、1回目と2回目で別の選択をすることで主人公が成長したことを伝えるんでしょ? 最初は盗んだパンにかぶりついてた奴が、大人になったんで、腹が減ってもパンを盗まなくなるわけだ」

ぴこ蔵
「読者はそう感じるわけじゃが、作者は反対に考える。つまり『第2の選択』で「成長した主人公」を表現するわけじゃから、そのために『最初の選択』は『未熟な選択』でなければならん」

ブンコ
「なるほど! 最初から完成された人格を持った主人公は変化しづらいけど、主人公が未熟だと成長させやすいってことだー」

ぴこ蔵
「その通り! 最初、主人公は未熟であること。成長の余地を残したキャラであることが大事なのじゃ」

ブンコ
「そこであんまり主人公に自分を投影しすぎないようにしないと、つい立派すぎる主人公を作っちゃうおそれがあるんだよね」

ぴこ蔵
「最初から完璧に描いてしまうと、どうしても無理が来るのじゃ。成長させようとすると想像力が追いつかず絵空事になってしまう。

それから、無意識というのは怖ろしいものでな、主人公が自分と一心同体になっておると、その身をまるで我がことのように心配してしまうことがある。

せっかく作った、鋭いガラスの破片で覆い尽くされた床。なのに、主人公は靴底に分厚い鉄板の入ったブーツで走ったりしてしまう」

ブンコ
「あうっ! だって痛そうだったから……」

ぴこ蔵
「毒蛇うようよの穴に落ちた主人公が、誰一人噛まれてもいないうちからさっさと火炎放射で蛇を焼き尽くす」

ブンコ
「げげぶっ! だって気持ち悪すぎるんだもん……」

ぴこ蔵
「じゃあ登場させるなっつーの!」

ブンコ
「確かにあたしの主人公にはびっくりするほど説得力ないっすよ。厚着してたらふく食わせて走るのイヤだからドラゴンにまたがりますよ。ああそうさ、自分に甘いから主人公も過保護さ!」

ぴこ蔵
「それでは読者が可哀想じゃ。なんで他人が楽な思いばかりする話を読まされて『これぞ今世紀最大の冒険!』とか言われなければならんのじゃ。読みたいのは裸足でガラスの破片の上を疾走する主人公の痛みであり、感じたいのは蛇に噛まれてふくれあがる顔面の苦しさなのじゃ。しかしお主の主人公と来たら、全然ピンチになったりしない。いつもカッコつけて説教するばかりじゃ」

ブンコ
「そーいえば、主人公が悪党どもに説教するシーンをお姉ちゃんに読ませたらいつもあんたが親に言われてるセリフだってぬかしやがってさ、頭に来たからお姉ちゃんの柿の種チョコ食べてやった。ガハハ」

ぴこ蔵
「何をやっとるんじゃ!」

ブンコ
「そんな、ちょっと未熟な私でした」

ぴこ蔵
「最後まで未熟では意味がないので、ちゃんと成長させることじゃ」

ブンコ
「あたしがなかなか成長しないのはどーしてだ?」

主人公の成長のキッカケは「他人の指摘」で!

ぴこ蔵
「さて、主人公はある時、成長しなければならん。おぬしとその主人公がなかなか成熟しないのは、成長の仕方に説得力がないからなのじゃ!」

ブンコ
「ギクッ!」

ぴこ蔵
「おぬしの主人公は、自分の未熟さにあまりにも都合よく気づいてはいないか? なんのキッカケもなしに突然目覚めてはいないか?」

ブンコ
「そういえば、家族総出で大掃除やってる時にあたしゃ隠れてマンガ読んでてさー、『遊んでるんだったらみんなの昼ごはん作れ』 って親に命令されたんだ。

だから『あたし料理が下手だってことに今突然気づいたから』って断ったら、『そんなのみんな昔から気づいとるわっ』『こっちは死ぬ気で食ってやると言ってるんだ』『ただ死ぬ前にお前の首だけは絞めさせてもらうからな』家族全員にツッコまれて血の涙流したこともありましたっけ」

ぴこ蔵
「うひょひょ。素晴らしい経験ではないか。そもそもおぬし、小説でも、小手先のギャグで逃げようとして結局失敗するじゃろ?」

ブンコ
「いくら師匠でもそんな質問には答えねーぞ!」

ぴこ蔵
「主人公は自分の未熟さに自分で気づいてはならないのじゃ。だってあまりにも嘘くさいではないか! 成長のキッカケとは、まさにどこかの誰かさんみたいに、必ず『誰か他人の指摘を受ける』ことなのじゃ!」

ブンコ
「耳が痛いよーしくしく」

ぴこ蔵
「それじゃ、その痛みが大事なのじゃよ! 主人公には思いっきり恥をかかせよ。ムチでしばけ。痛みを伴うことによって読者は主人公の気持ちを共有できる。同じ経験、同じ胸の痛み、同じ辛さを感じたとき、読者は主人公に共感してくれるのじゃ」

ブンコ
「ある意味、主人公はダメ人間のほうがいいんだね」

ぴこ蔵
「そういうこと。そして他人から容赦なくそのダメぶりを『指摘』されることが成長への近道となる!」

 

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主人公の目的を決めるなら「欠落感」を探せ!

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ぴこ蔵
「物語を面白くするには黄金の基本パターンがある。もう一度聞いておくか。ブンコちゃんよ、それはなんじゃ?」

ブンコ
「『目的を追う主人公が邪魔する敵と戦う』」

ぴこ蔵
「そうじゃな。ならば、この【 主人公の目的 】というやつをお主はどうやって決めておる? 」

ブンコ
「え? 急にそんなこといわれても…。だってあたし自身の人生の目的もまだ決まってないのにさー」

ぴこ蔵
「うーむ、さすがミス行き当たりばったりじゃな。お主の爆笑人生に関してはわしにはどうしようもないが、主人公の目的なら決めるヒントがあるのじゃ!」

ブンコ
「師匠、ぜひ教えておくんなまし! どうすれば大金持ちになれますか? 少々ヤバイ話でも可」

ぴこ蔵
「だからお主の金目当ての犯行についてはわしゃ知らんがな。しかーし! 【 主人公の目的 】を決めるにあたっては実はとっても簡単でうまいやり方があるのじゃ!」

ブンコ
「知りたーい! 教えて!」

ぴこ蔵
「よいか、よく聞くのじゃぞ。【 主人公の目的 】を決めるなら『欠落感』を探すのじゃ!」

ブンコ
「ケツラクカン? 」

ぴこ蔵
「もしくは欠如とも言う。お主の物語世界で、これだけはなくなっては困るという大切なものがなくなることじゃ」

ブンコ
「大切なものか……」

ぴこ蔵
「例えばお主がいま一番大切にしているものはナンじゃ?」

ブンコ
「なんだろ? 携帯電話かな」

ぴこ蔵
「そしたらその携帯電話が、ある日突然、なくなってしまうのじゃ。お主、どうする?」

ブンコ
「草の根分けても探す! なくなったら絶対マズイ!」

ぴこ蔵
「な? さすがのナマケモノもたまらず行動に移る」

ブンコ
「かーっ! ムカツクー! でもそんなことしてる場合じゃない。携帯はどこ? どこ行ったーっ!」

ぴこ蔵
「それと一緒じゃ。主人公も必ずそれを取り戻すために行動を起こすはずじゃ。ないと困るから取り戻しにいく。これこそが最も手っ取り早い動機付けじゃ」

ブンコ
「はっ!? なるほど。つまり、主人公に目的を持たせたかったら、主人公の大切なものを奪っちゃえばいいわけ?」

ぴこ蔵
「例えば、健康やお金じゃったり、家族の平和じゃったり。なんぼでも出てくるじゃろ?」

ブンコ
「それって結局、人間にとって何が幸せかっていう話になるのかも。深くなりそうだね」

ぴこ蔵
「深すぎて収拾がつかなくなる。ここから先はそれぞれの作品、それぞれの作家が持っているテーマ性やメッセージにかかわってくるので一般論としてはここまでしか語れない。他にも目的としては『復讐』や『夢・野望』などがあるが、それはまた別のところで詳しく語ろう。ただし、この手の話は個別に面談しないと最適なアイデアというのは出にくいもんじゃ。とにかく、主人公を動かすなら『大切なもの』を取り上げるに限るのじゃ!」

ブンコ
「目的を生み出すのは『欠落感』かー!?」

ぴこ蔵
「わかったらさっさと主人公から大切な何かを奪い取るのじゃ!」

ブンコ
「さすが師匠! 何につけても話が早い!」

 

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読者をぐんぐん牽引する『物語のエンジン』を簡単に作る2つの設定とは

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主人公に目的はあるか

ブンコ
「ストーリーを前に進めるための『物語のエンジン』には、主人公の目的と障害物の2つがあるって言ってたけど、これってどんでん返しと関係があんの?」

ぴこ蔵
「多いにあるのじゃ! それを理解するためにも目的と障害物についてもう少し考えを深める必要がある」

ブンコ
「それじゃあぴこ蔵師匠、主人公の『目的』っていうのはどーゆーこと?」

ぴこ蔵
「主人公がやらねばならんことであり、主人公の存在理由そのものじゃ。意味もなく外出したり、暇なのでパチンコに行ったりする。そんなヒマは主人公にはありゃあせん。何も変わらないなんてもってのほかじゃ。主人公たるもの読者の貴重な時間を浪費することは許されん。パチンコひとつやるにも確固たる動機が必要なのじゃ!」

ブンコ
「き、厳しいんだねー、主人公の立場って」

ぴこ蔵
「当たり前じゃ。主人公は何かを為すために存在しておる。常に「何をする」かをはっきり決めてやらねばならん」

ブンコ
「前回の実例(2)の主人公の場合は『遺産を相続するためにパチンコ台を攻略する』というのが目的になって、ストーリーが動き始めたわけかー」

ぴこ蔵
「主人公の明確な目的こそが『物語のエンジン』なのじゃ!」

ブンコ
「じゃあ、ストーリーが始まったらすぐに事件が起こらないと読者はついてきてくれないんだねー。出来るだけ早く目的を明確にすることが作者の義務ってことか」

ぴこ蔵
「おぬしの主人公は目的に向かって全力疾走しとるか?」

主人公には苦難を与えよ

ブンコ
「じゃあ『障害物』ってゆーのは何?」

ぴこ蔵
「これが人間の不思議なところなんじゃが、いくらすごい目的を設定しても、あまりにも事が順調に運んではちっともドラマチックには感じないのじゃな」

ブンコ
「そういえば、実例(2)の主人公にしても、『負傷」『不利なルール』などの理不尽な危機が次々に襲いかかってくるからこそドキドキハラハラしちゃうわけだよね。確かに、これと言ったピンチもなしに目的が達成されたって読者にとってはぜんぜん面白くないもんねー」

ぴこ蔵
「良いエンジンを積んだら、さらに物凄い悪路を走らねばならん。苦労しないと読者は前に進んでいる実感が湧かんのじゃ。いやはや、物語作りはサファリラリーみたいな作業じゃよ」

ブンコ
「読者の興味をひきつけるためには、主人公を襲う苦難が必要だってことかー!」

ぴこ蔵
「『障害物』とはまさにそのことなんじゃよ!」

面白い物語の基本形

ぴこ蔵
「さて、面白いストーリーにするためには、主人公が目的を持っていることと、障害物があることが必要じゃということがわかった。それでは、その二つを話の流れに取り入れるとどんな風になるかな?」

ブンコ
「主人公はある目的を持っている。当然その目的を達成しようとがんばるよね。ところが、それを邪魔する奴がいるわけ。主人公はそいつと戦うことになる…」

ぴこ蔵
「うむ、つまりこれが『対立』ってやつの正体なのじゃ」

ブンコ
「わかりましたー! 主人公は『目的達成』のために『障害物』と『対立』するわけだ!」

ぴこ蔵
「そういうことじゃ。『ドラマとは、主人公が目的達成のために障害物と戦うこと』つまり、面白いストーリーにするには、主人公が目的のために邪魔者と戦うべし!」

ブンコ
「師匠、不肖アタクシめがまとめさせていただいちゃうよ。

<面白いストーリーの基本形>
★目的を達成したい主人公が、それを邪魔する敵と戦う

これでどう?」

ぴこ蔵
「上出来じゃ。お主が書くべき『面白いストーリー』の姿がますますわかりやすくなってきたのう! 特に、とりあえず初めて物語を書くのなら、『ある目的を達成したい主人公がそれを邪魔する敵と戦う話』がおすすめじゃ! 基本中の基本じゃからな」

ブンコ
「よーし、さっそく主人公の目的を決めなきゃなー! でも、どうやって? 」

ぴこ蔵
「焦るでない焦るでない! お主にも簡単に「主人公の目的」を決める方法があるのじゃ! じゃが、そのためにまず知らねばならぬことがある!! その前に、この章のまとめなのじゃ!

★面白いストーリーの基本とは
「ある目的を達成したい主人公が、それを邪魔する敵と戦う」物語

 

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物語をさらにドラマチックに深める2つの実例

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ブンコ
「主人公が他の登場人物と対立することで物語がドラマチックになることは分かったよ。じゃあそろそろどんでん返しの作り方を教えてくれるよね?」

ぴこ蔵
「まだまだ! もっともっとドラマチックを掘り下げてみよう。お次のテーマは『ストーリーの基本形』! まあ、ストーリーのパターンと言っても相当あるし、その作り方に到っては星の数じゃ。決して誤解して欲しくないのじゃが、わしは、唯一絶対のストーリー製作法を教えるわけではないぞ。

そんなことはあり得ない! 不可能じゃ! ただ、最低限これさえ知っておれば、少なくともお主のストーリーが途中で道に迷うことはない。……という非常に実戦向けに簡略化した方法を伝授しようと思う。

この方法を用いて、とにかくひとつでもいい、ストーリーのあらすじを最後まで作って欲しいのじゃ!  一つ出来たらもう一つ。これを何度も繰り返すことによって、創作の要点が掴める。何事も経験、そして反復練習じゃ!

アタマで考えてテクニックを選んでおるようではまだまだ。無意識にさまざまな技法を繰り出せるようになるまでとにかくあらすじを作りまくることじゃ! 1日1あらすじ! これが目標じゃ!

説明のために、あらすじの実例を2つ用意してある。それでは、よくある失敗例として、まずは実例(1)を読んでもらおうかの。


★★実例(1)

パチンコ台には巨大な龍が描かれていた。その両眼は主人公をにらみつけている。主人公は今日も朝から暇つぶしにパチンコ屋で玉をはじいている。

いくつになっても定職につかないことに腹を立てて自分を勘当した亡き父も、会社の帰りによくこのパチンコ屋に通っていたことを思い出す。腹が減ったのでパチンコを中断し、近所の立ち食いそば屋でたぬきそばを食べていると、誰かに肩を叩かれた。振り向けば兄が立っていた。やはり暇そうである。仕事は休みかと問いかけると、兄はうなずいてそばをすすった。

主人公は兄とパチンコ屋に戻って新しい台を探す。隣同士に座って顔見知りの男の噂話をした。その男は親が急死して家業の米屋を引き継いだのだ、と主人公が言った。「米屋もあれだけどコンビニ経営もいいよな」兄は言う。「実はリストラされちゃってさ。一緒にコンビニやるか?」

突然の兄の申し出に主人公はどう答えてよいかわからない。相変わらず玉も出ない。最後の玉が無くなった時、昔、亡き父がよく歌っていた歌が店内に流れた。

その瞬間、今は亡き父の思い出とともに一つの言葉が主人公の脳裏に甦った。「兄貴を見習って就職しろ」主人公はタバコが吸いたくなる。しばらく止めていたタバコを兄からもらって火をつける。どうってことはない、またひとつ禁煙が終わっただけだ、と思う。パチンコ台の龍は主人公を叱るかのようににらみつけている。

主人公は「別に何でもいいけどな、俺の方は」と呟いた。


ぴこ蔵
「どうじゃな? ↑の例は?」

ブンコ
「うっわ~。やる気ないっつーか退屈っつーか本当に何も変わんないなー。でも、よく見かけるんだよよねー、こんな感じのハナシ」

ぴこ蔵
「パチンコしてそば食ってタバコ吸っただけじゃからなあ」

ブンコ
「『俺、小説書いたんだけど、読んでくれない?』とか言ってこういうの読ませられたことあるんだけどさー。悪いけど正直たまんなかったっす。こんな話を聞いても「ドラマチックねえ」とは思わないよねー」

ぴこ蔵
「つまり、誰とも対立しないこんな話にはドラマがないんじゃ。これではいつまでたっても物語が動き出さん。寝たきりじゃ」

ドラマチックにする要素

ブンコ
「ほんじゃーさー、どんな話ならドラマがあるの?」

ぴこ蔵
「パチンコの話が出たんで、これを素材に使ってみるか。こんなストーリーならどうかな?


★★実例(2)

パチンコ台には巨大な龍が描かれていた。その両眼は主人公をにらみつけている。

『この台を攻略した者に全財産を遺す』という遺言に従って自分を勘当した亡き父が遺したパチンコ台に立ち向かう主人公。

固唾を飲む一族郎党の前で公開勝負をする日の直前、主人公は暴漢に襲われ手首を負傷する。

激痛に耐える主人公の前に現れたのは、最大のライバルである実の兄だった。兄は主人公と父親の確執を暴き、お前にパチンコをする権利はないと言う。思わず感情的になった主人公は「たった10発の持ち玉で勝負する」という過酷なルールを呑んでしまう。

勝負が始まり、傷はうずき、玉は減ってゆく。あと4発、3発。

痛む手にラスト2発の玉を握りしめた時、昔、亡き父がよく歌っていた歌が店内に流れた。

その瞬間、今は亡き父の思い出とともに一つの言葉が主人公の脳裏に甦った。「画竜点睛」。

パチンコ台に描かれた巨大な龍。撃つ者をにらみつけるその両眼。

「そうか!わかったぞ!親父!」主人公は最後の気力を振り絞り、痛む手首を極限まで回す。そして2発の玉が目にも留まらぬ速さで一気に打ち出された!


ぴこ蔵
「どうじゃな? ↑の例は? 急ごしらえなんで設定がいい加減なのは大目に見てくれ。ビッグ錠&牛次郎みたいでいい感じじゃろ?(笑)」

ブンコ
「少年漫画のオールドファンならうなずいてくれるかもよ。でも確かに、前の話に比べると、少しドラマチックな雰囲気になったよねー。なぜ?」

ぴこ蔵
「そこじゃ! そこが秘伝のテクニックじゃ! 誰もが簡単に作れる『物語のエンジン』があるのじゃ!」

ブンコ
「えっ? すると師匠、ストーリーをドラマチックにするための特効薬みたいなものがあるということすか?」

ぴこ蔵
「その通り! いいか、よく聞くのじゃぞ。物語を前に進めるには、2つの設定をする必要がある。それは『目的』と『障害物』なのじゃ!」

 

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ドラマとは葛藤のことである

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ブンコ
「さて、ぴこ蔵師匠、ストーリー作りの一番最初にやるべきことはどんでん返しの作り方を覚えることって言ってたよね? 早速教えて!」

ぴこ蔵
「あせるな。まずはその『どんでん返し』の構造を理解するために面白い物語はどうやって出来ているのかを見てみよう!」

ブンコ
「えっと、面白い物語って例えばどんなの?」

ぴこ蔵
「まず、その逆を考えてみようか。『誰も楽しめない話』があるとすれば、それは例えば、朝礼の時の校長先生の長話じゃ」

ブンコ
「げっ、それ聞いただけでもう貧血気味だ!」

ぴこ蔵
「退屈じゃからなー。サスペンスもないし、ロマンスもない。大体結論もわかっておるし、ギャグも言わん」

ブンコ
「その上、お説教されるんだもんなー」

ぴこ蔵
「この手の話と対極にあるのが「面白い物語」じゃな。ドキドキはらはら、次はどうなるの? あの人は誰のことを愛しているの? そんな一瞬たりとも気が抜けない話じゃ。手っ取り早く言ってしまえば、それは『ドラマチックなストーリー』のことじゃな」

ブンコ
「ドラマチックって具体的にどういうこと? どうすればドラマチックになるのさ?」

ぴこ蔵
「小説とかシナリオの書き方を解説した本を読むと、『ドラマとは葛藤である』と書いてあるのをお主もよく目にするはずじゃ。つまり、物語をドラマチックにするためには『葛藤』とやらを持ち込めばええのじゃ」

ブンコ
「『葛藤』とか言われたって全然わかんないよー。画数の多い漢字を見ると、頭がぼやーっとしてくるんだよねー」

ぴこ蔵
「そうか。するとお主、『主人公の成長や変化の過程における葛藤を書け!』なんて言われると頭がフリーズしてしまうじゃろな」

ブンコ
「もうサイアクー! なんか葛藤って夏休みの朝顔観察っぽいよねー」

ぴこ蔵
「いいところを突いたぞ!ちなみに辞書を引いてみると…

【葛藤(かっとう)】
〔もつれ合う葛(かずら) や藤の意から〕
(1) 人と人とが譲ることなく対立すること。争い。もつれ。
(2) 〔心〕 心の中に相反する欲求が同時に起こり、そのどちらを選ぶか迷うこと。コンフリクト。
(3) 禅宗で、解きがたい語句・公案、また問答工夫の意。

まさしくもつれあうツルとツタのことじゃ。ありゃりゃ、禅問答まで出てきおったぞ。葛藤と言う概念はどうも抽象的で扱いにくいんじゃのう」

ブンコ
「葛藤ってさー、意味ぐらいはわかるけど、視覚的にイメージしづらい言葉だよね。なーんか4畳半で一人ぐじぐじ反省するって感じだし」

ぴこ蔵
「確かに葛藤のヴィジュアルはなかなか思いつかんなあ」

ブンコ
「だいたい、主人公が葛藤する様子なんてどうやって描写すればいいのさ? 髪の毛をかきむしりながら独り言でもゆーのか? 口元をゆがめて手も少し震わせてやろーかなー。違うなー。そーゆーことでもないなー。

ポーズかな? 腕を曲げて腰に当ててクイクイッと。そんな葛藤はやだなー。こりゃいかん。無理だ無理だ。あたしに主人公の葛藤なんて描けないよ。老師、またしても頭がぼやーっとしてきた」

ぴこ蔵
「それは、一人で葛藤すると思うから難しいんじゃよ。心理描写しようなどと思ってはいかんぞ。ありゃつまらん。エンターテインメントで「内部の葛藤」は止めたほうがイイ。特に、映像化を考えておるのならおすすめできん。名手ならともかく、おぬしがやっても読者に迷惑かけるだけなのじゃ。

こんな時、よいこは頭を使うのじゃ。例えば…人と人とが争う様子を書くのはイメージしやすいじゃろ? 内面の葛藤も擬人化すればいいのじゃ。誰か主人公が葛藤する相手を登場させればいい。考え方をこう変えてみるのじゃ!

「ドラマとは主人公の葛藤から生まれる」
↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「ドラマとは主人公が他の登場人物と葛藤することで生まれる」

ブンコ
「うーん、まだ「葛藤」の意味がわかりにくいな」

ぴこ蔵
「ならば、お主にもわかりやすい言葉に置き換えてみよう。

それは辞書の中にも出てくる「対立」という言葉じゃ。すると、こうなる。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓
「ドラマとは主人公が他の登場人物と対立することで生まれる」

ブンコ
「なるほど! ってことはつまり、手っ取り早く話をドラマチックにしようと思ったら主人公を登場人物とケンカさせればいいわけだ。でも、ホントかなあ?」

ぴこ蔵
「葛藤とは、簡単に言えば、異なる意見の中で自分の考えが選択に悩むことである。具体的に言うとこういう例が考えられる。登場人部は主人公と友達。二人で歩いていると主人公が落ちていた財布を拾う。葛藤のポイントはこの財布を交番に届けるか否か。ここからは会話じゃ。


主人公「おいおい、二万円も入っているぞこの財布」

友達「ふーん、でどうすんの?」

主人公「なんかうまいもん食って、欲しかったゲームソフトでも買うか」

友達「これだからゲスなやつとは付き合いたくねえんだよな。お前のやろうとしていることは最低レベルの犯罪だ」

主人公「なんだよおまえ、もしかして交番に届ける派?」

友達「あたりまえだよ。そうすれば半年後に合法的に2千円が手に入る。ノーリスクでだ」

主人公「それって逆にいやらしくない? 正義とはそんなことでいいのか」

友達「泥棒に正義を語られたくないね。さあ、とっとと交番に行くのだ。キリキリ歩け!」

主人公「全然釈然としないけど、まあそういうもんかな。でもな、2千円入ったとしてもお前には奢らないからな」


まあ、こんな感じであろう」

ブンコ
「なるほど、一人で迷うより伝わりやすいし、会話にすればそれだけで面白いね。でも、なんか難しくないかな。私にもできんのかな」

ぴこ蔵
「コツとしては、うまく会話がはずまないところを思い切ってちょっとケンカ腰の会話にしてみることじゃ」

ブンコ
「どんな感じかやってみてよ」

「対立」は物語のエンジン

ぴこ蔵
「それでは『対立』の実例として「会社に遅刻したOLと上司との会話」を書いてみよう。ただし、ポイントとして『この会社では電車の事故で遅れた場合は証明書が必要』ということを絶対書かなければならないと決めておこう。

ま、対立を避けて平穏に会話するとこんな感じじゃろう」


上司「おや、どうしたの? 遅刻?」

OL「すみません! ちょっと忘れ物して1本遅いのにしたら今度はその電車が事故で遅れてしまって…」

上司「30分ね。まあしょうがないよね。たまにはこんなこともあるさ」

OL「何か証明する書類とか提出したほうがいいですか?」

上司「事故のせいだし僕は別にいいんだけどさあ。ただ最近ちょっと管理の件で上がうるさくってね、ま、念のためってことで、悪いけど駅で証明書もらっといてよ」

OL「はい、わかりました。お昼休みに行ってきます。申し訳ありませんでした。以後気をつけますから」

上司「はいはい。よろしく」


 

ブンコ
「なんかこんな会話、別に書くほどのもんじゃないですよね」

ぴこ蔵
「どうやってもこれ以上はふくらまないしな。そこで、軽くギャグ風に対立させるとこうなる」

 


上司「おい、遅刻してきて挨拶なしか?」

OL「だって電車の事故ですから」

上司「こっちは別に電車で来てくれって頼んだ覚えはないぞ」

OL「じゃあタクシー代、課長が出してくれるんですか?」

上司「そういうことを言ってるんじゃないだろ!」

OL「わかりましたよ。駅で証明書もらってくればいいんでしょ」

上司「なんだよお前、態度悪いぞ」

OL「お前なんて言わないで下さい。私は課長の奥様じゃないんです。まあ、奥様にはお前なんて言えないと思うけど」

上司「言ってるよ」

OL「あら、じゃあこないだの飲み会でセクハラしたこと奥さんにはまだバレてないんですねえ」

上司「あ、それは違うんだ。誤解、誤解なんだよ」

OL「フン」


ぴこ蔵
「ちょこっと対立させるだけでテンションが上がる。読者も「おや?」と集中するし、伝えたい情報の他に「次はどうなる?」の要素が入ってくる。つまり、いろんな情報が隠しやすいのじゃ」

ブンコ
「情報を隠すってどういうこと?」

ぴこ蔵
「例えばこの『駅で証明書をもらう』というのが重要な伏線だとする。ところが、この時点では読者にそのことを気づかせたくない。そんな時、OLと上司の関係に目を向けさせてしまえば読者の意識はそちらに流れてしまうのじゃ」

ブンコ
「実例だとよくわかるねー。退屈になりそうな部分には「対立関係」を持ち込むと緊張感も出るしテンポもいいし。登場人物のキャラも立ってずいぶん面白く説明できちゃうんだなー…」

ぴこ蔵
「ドラマとは主人公が他の登場人物と対立することで生まれる。さて、それでは主人公は、いったい誰と、何のために対立するのじゃろうか? 実はそこには、お主の物語を一気に走り出させるための『物語のエンジン』が隠れているのじゃ!」

ブンコ
「ドラマとは、主人公が他の登場人物と対立することで生まれる。…なるほどなー!」

 

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物語のオープニング

「かっこいいオープニング」の罠

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面白いストーリーを作るためにあなたは何をするべきか

ブンコ
「私の名前はブンコ。作家になりたい女。でも、なかなか作品が書けない。書き始めても最後までフィニッシュできない。どうしてなんだろう? やっぱり才能がないのか……? 文章教室に通おうか?」

ぴこ蔵
「そんなことはないぞお」

ブンコ
「あんただれ?」

ぴこ蔵
「わしはあらすじのプロ、ぴこ山ぴこ蔵じゃ! 日本中の悩める書き手を救うためにやってきたのじゃ!」

ブンコ
「あんたいったい何を言って…… たった今、弟子にして下さい!」

ぴこ蔵
「すごい食いつきじゃな」

ブンコ
「だって本当に悩んでるんだよー。だれでもいいから助けて!」

悩める書き手に教えたい

ぴこ蔵
「それではさっそく最初の質問じゃ! お主は物語を作るとき、まずかっこいいオープニングから書き始めておらんか?」

ブンコ
「もちろん! 最近の自作でもお気に入りのファンタジーは

その赤銅色の龍は、この星の一番高い場所にある万年雪の下で、永遠にも似た眠りを静かにむさぼっていた。

から始まるの! なんか凄いお話がはじまりそうでしょ」

ぴこ蔵
「ほほう!」

ブンコ
「ハードボイルドなサスペンスだってあるんだよ。

朝焼けが始まった頃、店の駐車場に一台の車が滑り込んできた。まだ暗いというのにスカーフとサングラスで顔を隠した女が運転席のウインドウを開けて私に合図した。私は営業用の笑顔で車に近づくと女が話し掛けてくるのを、そしてサングラスの奥にある美しい眼を見せてくれるのを待った。しかし女はサングラスを外すよりも先に、ハンドバッグの中から拳銃を取り出した。

なーんて感じの、そりゃもうかっこいい、マイ・フェバリット幕開け。自分の中に湧いて出たイメージに陶酔してしまう瞬間だよ。もうこれで一本書けたような気になってしまうのよん」

ぴこ蔵
「実はそれが失敗の原因なんじゃよ」

ブンコ
「ギクッ!」

ぴこ蔵
「そういうのってオープニングのインスピレーションは強烈でもまず長続きすることはないからのう。その場の雰囲気にハマッて始めた恋愛と一緒じゃよ。お主は自分の影に恋をしておるのじゃ。うひょひょ!」

ブンコ
「ギクギクギクッ! 何てこと言うんだアンタは!」

ぴこ蔵
「ちなみにお主、その小説、最後まで書き上げたのか? いや、半分ほどでも書いたかな?」

ブンコ
「か、書いてません……」

ぴこ蔵
「なぜ書かないのじゃ?」

ブンコ
「だって、刺激的なオープニングが終わると、主人公がさっそく途方にくれちゃって。次に何をすればいいのかわかんないんだもん」

ぴこ蔵
「それはそうじゃろう。お主が決めておらんのじゃから」

ブンコ
「げげっ!」

ぴこ蔵
「そんなタイプの人は書く順番を変えることじゃよ」

ブンコ
「書く……順番?」

ぴこ蔵
「よーし、それでは教えてあげよう!」

何はなくとも「どんでん返し」

ぴこ蔵
「書きたい物語のイメージをすでに持っているなら、『あっと驚く結末』を作るためにはまず、おぬしの物語イメージに合わせた『どんでん返し』を作ることじゃ!」

ブンコ
「どんでん返し? あの『なんとかサスペンス劇場』とかで最後に意外な犯人が出てくるやつ?」

ぴこ蔵
「まあ、あんまり意外ではない場合がけっこうあるけど(笑)基本的にはそういうことじゃ」

ブンコ
「だって老師、それじゃ『サスペンス劇場』用の作品しかできないじゃん」

ぴこ蔵
「とんでもない思い違いじゃな。ミステリー、サスペンスは言うに及ばず、恋愛、ホラー、アクション……。どんなジャンルの物語にも、どんでん返しが隠れておる。

それどころか、大前提なのじゃよ。むしろ、人はどんでん返しを読みたいがために小説を読むのじゃ。どんでん返しがなければ、面白いとは思ってくれん」

ブンコ
「本当ですかあ?」

ぴこ蔵
「少なくともエンタテインメントの要素を持つ物語ならどんでん返しは必ず必要じゃ。

事実を伝えることに意味があるノンフィクションとか、あるいは哲学的な思索を繰り広げる高邁な思想書なら、確かにそんなものは関係あるまい。しかし、エンタテインメントはそれでは許されんぞ。面白くなければ娯楽としての存在価値がないのじゃ。人間とは、薬がどんなに苦くても文句を言わんが、ケーキが期待していたより甘くないと怒り出す生物じゃ」

ブンコ
「どんでん返しがあるとどうなの?」

ぴこ蔵
「どんでん返しが提供するのは、信じていた世界が一瞬で大逆転する衝撃じゃ。予測可能な展開だったはずなのに、あっという間に何もかもが姿を変える。頭の中は真っ白。アドレナリンとドーパミンが駆け巡る至上のびっくり体験なのじゃ!」

ブンコ
「それは確かに自分の作品にどんでん返しが入ってたら面白いよねー……。ちょっと興奮するなー」

ぴこ蔵
「さて、やっとこれでスタート地点に辿り着いたのじゃ。次回からいよいよ、誰も教えてくれなかった『面白くてたまらないストーリー作り』のための具体的なテクニックについて説明をはじめられる。つまり、突き詰めれば『どんでん返しの秘法』じゃ!」

ブンコ
「いや、でも、ぴこ蔵師匠。あたしみたいな素人にどんでん返し作れったって、いきなりそれって難しくないかねー? もっとこう、地味で堅実な文章修行とか……」

ぴこ蔵
「いやいや、お主が一番最初にやらねばならんのは派手な『どんでん返し』の作り方を覚えることじゃ。そうすれば、物語作りはあっという間にプロ並みじゃ。なぜなら、どんでん返しこそが全てを決めるからじゃ」

ブンコ
「どんでん返しが全てを決める????」

ぴこ蔵
「その通りじゃ。結末、伏線、オープニング、全てを決める。難しい、複雑そう、というのは思い込みに過ぎん。どんでん返しには簡単な作り方があるのじゃ!」

ブンコ
「そ、それを早く教えてくでーっ!」

『コフィン・ダンサー 』上 (文春文庫)

『コフィン・ダンサー 』下

著:どんでん返しの魔術師・ジェフリー ディーヴァー

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