100年経っても面白い小説や漫画やシナリオを書くために


思えば手探りでショートショート小説を書いていた中学・高校生の頃、私は自分が書こうとしてどうも上手く書けないでいる、作品の『テーマ』というものがさっぱりわかりませんでした。

私は『テーマ』というものを、自分から発信するイメージやメッセージだと、誤解していたのです。

そこには、「宇宙の謎を解く」とか、「人生の意味を明らかにする」みたいな、途方もなく立派な目的が潜んでいなければならないと思っていました。

ところが私には、世界に向けてメッセージを発信できるような、深くて大きい哲学などありませんでした。

難しい問題を考えようとしても
「カレーパンやカレーうどんはあるのにカレー餅はなぜないのか」
ぐらいがせいぜいで、立派な思想どころか幼稚で薄い言葉すら出てきません。

悔しくてへこみました。
大いにプライドが傷つきました。

中学生当時は、ライティングのノウハウとして学校で教わった“作文の書き方”しか知らなかったのと、「まずは文学的なテーマを決めなくちゃ」と思い込んでいたのとで、背伸びした上にさらに大上段に構えていたのです。

私が書きたかったのは、純文学やジャーナリスティックなノンフィクションなどではなく、梶原一騎先生の『タイガーマスク』みたいなエンターテインメント小説であり、活劇漫画のシナリオだったんですけどねえ。

すっかりひねくれて星を睨んだ私は、いつしか小説や漫画やシナリオのテーマなど考えないようになりました。

その代わり、とにかく読者をびっくりさせることだけに集中するようになったのです。追い詰められた鼠が猫に噛みついた挙句の選択でしたが、結果オーライで「テーマ性」に対してある種の覚悟を決めることが出来ました。

テーマなんてものは、結果的に作品全体で表現できればいいや、と思うことにしたのです。

「とにかく優先的にストーリーを面白く語ることだけに集中しよう。白い原稿用紙のジャングルでは面白ければいいのさ、面白ければな。虎だ虎だ。お前は虎になるのだ!」

そう考えを切り替えると、今度はいきなり対極に走りました。テーマに沿ったキャラや暗喩を考えるのではなく、まずは読者を引きずりまわし、誤解させ、ネタをばらした時に「あっ!」と驚かせる話を作ろうと決心したのです。

人を驚かすために何が必要だろう? SF的な奇抜な発想や、ファンタジックなイメージの飛躍は有効だと思いましたが、そこにはいわゆるセンス・オブ・ワンダーが大きく関わってくるので、おそらく自分にはムリだろうと感じました。

鈍感で不器用な私にも出来るうまい訓練方法がどうしても思いつかなかったのです。

でも、どうにかして、面白い小説や漫画やシナリオのストーリーを書きたい。

そこでまずは「そのコツを最も確実に身につけるためにはどんな技術を学ぶべきか?」を考えました。

入手しやすいお手本がたくさんあって、面白くて通俗的で、しかも目的がはっきりしているジャンルは何か?

その結論として、長い歴史を持ち、すでに多くの研究者によって系統だてられている『ミステリー小説の構成テクニック』が強い武器になるのではないかと思い至ったのです。

重要視したのはその「論理性」でした。ルービック・キューブのように基本的なロジックがわかっているものは、反復して練習すればだれでも正解を再現できるからです。

それからはパズルを解くようにあらすじを組み立てるようになりました。テーマやメッセージについて最初から悩むことはしなくなったのです。

そんなことよりも、出来事のつながりを考えることで、ストーリーが最後まで破綻なく完成することに気づきました。

自分が書いている以上、自分らしさは登場人物の行動の選択に絶対に投影されるはず。そう思ったので形而上的で観念的な思索は放棄したのです。そして自分自身に言い聞かせました。

「探すべきは、100年間変わらぬ評価を保ち続ける作品を作る方法だ」と。

流行している風俗や、それぞれの時代の社会状況にあったキャラクターのスタイル、最新の科学技術などはすぐに移り変わってしまいます。

知りたいのは、O・ヘンリーのような、具体的でかつ通俗的なスタイルを徹底的に踏襲したストーリーの『作り方』です。

O・ヘンリーが数々の名作短編を書いていたのは約100年前。その小説は世界中で親しまれ、何度も脚本化されては、今も舞台やTVで上演され続けています。世は移ろい、風俗や流行も変わっていったというのに。

そんなふうに、自分が死んだ後1世紀もの間、ずっと面白がってもらえるストーリーが作れたら最高ではありませんか。

「俺はこれから、通りがかりの人に面白い話を語って聞かせて小銭をもらう、街角のエンターテイナーになるのだ。通俗的な『面白さ』を売りにするからには、途中でネタがばれないように気をつけて語ろう。そろそろと慎重に騙していって、思いもよらぬ展開にして、後は思いっきりびっくりさせてやるのだ。ええい虎だ虎だおま(以下略)」

ひとつ間違えると振り込め詐欺師ですが(笑)、これでやらなければならないことが明確になったので、落ち着いて考えられるようになりました。

その結果、まず自分がやらなければならないのは、世界中の偉大なる先人たちが残していった名作を解析することだと思いました。とくに、具体的なエピソードをいかに構成しているかに集中しました。

エンターテインメント・ストーリーで重要なのは、何よりも「面白いアイデア」です。キャラや世界観は重要な要素ですが、その前に優れたアイデアがなければ、当然ながら話は面白くならないのです。

小説や漫画やシナリオにおいて、特に短編作品の出来は、中心となるアイデアの良し悪しに直結します。短編を作りたければ、できるだけたくさんの短編、それも評判のいい作品、いわゆる「名作」を探して分析することが大事です。

まずは「その名作のどこが面白いと感じたのか?」と自分の中で考えぬき、言語化して、できるだけその感覚を明確に把握しようと努めました。

そうやって面白い部分のコアをピックアップできたと思ったら、次に、「なぜか? どうしたらそうなるのか?」ということをじっくり考えるようにしました。

図解でもなんでもして、具体的なエピソードを抽象化し、普遍化し、言葉に固定できるまで自分なりに分析するのです。

ここで妥協してはいけないと肝に銘じました。自分がとことん納得できなければその面白さを他人に伝えることはできません。

そして、その作品を面白くしている理屈が完璧に理解できたら、その論理を、キャラや世界観を変えて「再現」してみました。

漠然と感じていた『面白さ』をオリジナルとは全く違う設定の下で確実に再現できたとき、その名作の力を使いこなせるようになります。

技術を学ぶというのはそういうことだと思います。そんな名作の『面白さ』を再現するためのコツを探るべく、あなたの愛してやまない物語の一つを楽しく解析してみましょう!

※新潮文庫「O・ヘンリ短編集」は短篇テクニックの宝庫にして教科書であります。(一)から(三)までありますのでぜひ全部読んでください。

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