物語のツイスト作り方

意外すぎる展開! 物語を刺激的にするツイストの作り方

ぴこ蔵ニュースレター

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~『生成AI時代のストーリーテリング』

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ストーリーを突然あさっての方向に転換し、読者の予定調和予想を覆す『ツイスト』。中でも効果的なのは『偶然』を使って仕掛ける技。登場人物が挑むギャンブルに読者は思わず凍りつく。

こんなご質問をいただきました。

『ツイスト』と言う技法があるのを知りました。この『ツイスト』は”ストーリに突然の出来事を加えることで先の展開を予想できなくする”と解釈しているのですが、「これって重要な伏線を隠すのに最適ではないか?」と思ったのです。ツイストによるパターンの崩壊によって先の展開が予測できなくなり、そのインパクトによって先を読ませたいと思わせると言うことですが、それは同時に読者の頭から直前の展開を忘れさせることも可能ではないかと思いまして・・・・・ぴこ蔵さんはこのことについてどのように考えますか?

ぴこ蔵です。

まさしくご賢察の通りです。たとえばこれはミステリーのテクニックのひとつの例ですが……

「真犯人の正体につながる決定的なヒントを出した直後に、『突然銃声が鳴り響く』とか『女の悲鳴が聞こえる』などのツイストを起こして、語り手の視点をそちらに移動させる」という技があります。

ヒント(伏線)の直後にツイストする、というのがミソですね。そうすると当然ながら読者の関心もそちらに移ってしまう。それで、その重要なヒントを見逃したり忘れてしまうわけです。

後になって謎解きをする時、そのヒントがしっかり出ていたことを思い出して、読者は『しまった!』と臍を噛むことになります。ひらめきのとおり、ツイストは伏線隠しには非常に有効な手口だと思います。試しに使ってみてください。

他にはどんなツイストがあるのでしょうか。

ガルシア・マルケス著のTVドラマ用のシナリオ教室『物語の作り方』では【ギャンブルの要素】を使ったツイストが挙げられています。さすがガルシア・マルケス! という示唆に富んだ一冊ですので、ぜひ読まれることをおすすめします。

 

「強盗に侵入された家の女主人が、一か八かの反撃を試み、強盗を眠らせようとして睡眠薬入りのワインを勧めるのですが、グラスがすりかわってしまい、逆に自分が飲んで眠ってしまう」……という、先の展開が全く読めなくなる意外性に満ちたツイストでした。

登場人物が、運を天に任せて一発勝負の賭けに出るのです。

どんでん返しとの違いは、ツイストが『登場人物による作為的なもの』ではなくて『運命』=『偶然』の要素を使った仕掛けである、というところだと思います。

偶然とは人智を超えるものです。もちろん実際には作者がその結果を決めているのですが、物語の中ではまるで『神様の気まぐれ』であるかのように見えます。《ギャンブルの結果待ち》という凍りついた時間の中では、読者はただ固唾を呑んで先行きを見つめるしかないわけです。

重要なヒントを出した直後に使うツイストは「何が起こっていても、一瞬で読者を受動的にし、思考を金縛りにして その関心を本来の対象から逸らせてしまう」のがポイントです。

《暴力や緊急事態によるパニック》《予想外の出来事による感覚の狂い》など、人間が一瞬、思考を放棄して立ちすくむような場面をツイストとして利用するといいでしょう。

また、精神的にタフで劣勢に耐えるのが強い人間でも、意外に動揺しやすいのが《突然のチャンスとその誘惑》であります。「勝った!」と思った瞬間、冷静な判断ができなくなってペースを乱してしまうのです。これは使えます。

ただし、『偶然』を利用するツイストは一作の中であまり多用すると『ご都合主義』だと言われますのでここ一発の時だけにビシッと決めることを心がけましょう。

よく出来たツイストは単なるヒント隠しだけにとどまらず、後悔してもしきれない一瞬の迷い、強欲による悲哀、はかない夢の切なさなどを表現することも可能です。人間の本質を浮かび上がらせる名場面として非常に説得力があり、うまく使えればあなたの物語に人生の深い味わいを与えてくれるでしょう。

 

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