どんでん返しとは囮で騙す技術
ブンコ
「ぴこ蔵師匠、『どんでん返し』をどう作るのか? というのがテーマなわけだよね?」
ぴこ蔵
「そういうことじゃ。それではさっそく質問じゃ。『どんでん返し』を最も簡単に言い表すと何じゃと思う?」
ブンコ
「…? さっぱりわかりましぇん」
ぴこ蔵
「よいかな、耳の穴かっぽじって聞きなさい。どんでん返しとは…『Aと見せかけて、本当はBである』ことじゃ!」
ブンコ
「Aと見せかけて、本当はB…?」
ぴこ蔵
「これがどんでん返しの基本形なんじゃよ」
ブンコ
「たったこれだけ?」
ぴこ蔵
「さよう! あとはいかに読者にAと思い込ませるかだけのことじゃな」
ブンコ
「今度は単純すぎてわかんない」
ぴこ蔵
「それではもう一度。《Aだと思っていたらBだった》これがどんでん返しの構造じゃ」
ブンコ
「つまり、予想や思い込みをひっくり返されるってこと?」
ぴこ蔵
「さよう。ポイントは”思っていたら”の部分じゃ。誰が”思っていた”のかというと『読者』なのじゃ。つまり作者側からいうと《Aだと思いこませておいてBを出す》という、読者に『ミスリーディング』させる技なのじゃ。どうじゃ、思いっきり簡単じゃろ? 」
ブンコ
「シンプルだねー」
ぴこ蔵
「『【目的】を追う主人公がそれを邪魔する【敵】と戦う』 これが読者を物語に引き込むためのベーシックな構成である。そして読者を満足させるためになくてはならないのが「どんでん返し」なのじゃ。『Aと思ったらBだった』がその基本構造である。この「どんでん返し」を構成の中心にすえて肉付けをすれば『面白いストーリー』が完成するのじゃ!」
ブンコ
「で、その肝心の「どんでん返し」はどう作るのさ?」
ぴこ蔵
「手っ取り早く言うとじゃな、どんでん返しには明確なパターンが存在する。最初はとにかくその中から選択すればよいのじゃ」
ブンコ
「マ、マジで? それってチョー楽勝じゃん!」
ぴこ蔵
「では、どんなパターンがあるのか??? ズバリ言おう! わしは「どんでん返し」を全部で10タイプと見ておる!」
ブンコ
「ええっ!? どんでん返しって、たった10タイプ?!」
ぴこ蔵
「いわば最大公約数じゃな。細かく分けていけば50、100とどんどん分けられる。しかし、それでは「どんでん返し」を作ろうとするたびに分厚い事典が必要になってしまうじゃろう?」
ブンコ
「たしかに…」
ぴこ蔵
「いつでもどこでもどんでん返しを考えるためには、常に頭の中にその構造を思い浮かべる必要がある。10タイプというのは、これ以上少ないと分ける意味がなくなってしまうし、多いと全体像を把握できなくなるギリギリの数なのじゃ」
ブンコ
「ふ~ん。じゃあ、その10タイプを覚えるとどんないいことがあるのさ?」
ぴこ蔵
「この10タイプさえ知っていれば、もうどんでん返しのネタに困ることはない。映画や小説など、さまざまな物語の「どんでん返し」が簡単に分析・理解できて、あっという間に、次々に、作れてしまうのじゃ!」
ブンコ
「ではさっそくぴこ蔵老師! 10タイプのどんでん返しとやらについて説明してちょーだい!」
ぴこ蔵
「おっと、その前に、前提となる条件を言っておこう!面白い物語の基本的なパターンとは、何度も言うが、【目的】を追う主人公が、邪魔する【敵】と戦う話じゃ。実はじゃな、どんでん返しはこの2大要素である『目的』あるいは『敵』に仕掛けるのじゃ」
ブンコ
「『目的』のどんでん返しと『敵』のどんでん返しがあるの?」
ぴこ蔵
「うむ。そういうことじゃ。【目的】と【敵】のどちらにも仕掛けることができる。そして、そのうち【目的】のどんでん返しには2タイプある。まずは『目的』のどんでん返しから説明しようかの」