ユーモアという武器

ユーモアという武器

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あなたの文章が「稼げない」理由
~『生成AI時代のストーリーテリング』

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真面目に生きることは素晴らしいことですし、誠実さは何よりの美徳であります。

運転士が真面目に運転しなければ電車は遅れます。海パン一丁の出納係がいる銀行にお金は預けたくありません。皆さん勤務中はニコリともせずにお仕事に打ち込んでいただきたい。

だがしかし、人間、堅いだけでは長く持たないもんです。

真面目に仕事をするだけでは飽きがきます。ストレスも溜まることでしょう。ぴりぴりした現場に長時間いると身も心も疲れ果てます。だからこそ人生にはユーモアが必要なのでしょう。

いわんやこれを読んでいるあなたのように、小説であれマンガであれ映画や演劇であれ、ましてやセールストークならばなおのこと、面白いストーリーを書いて他人を楽しませようって人は、誰よりも楽しみ上手、笑い上戸、感動屋でなければなりません。何よりも洒落が分かんなくちゃいけません。

断定! 断定! 断定! こうあらねばならない! かくかくしかじかで間違いない! ナントカなのだ! カントカしかあり得ないのだ!

……そんなに張り詰めてばかりでは酸欠で死んじゃいますぞ。

作者の断定が激しくてちっともくつろげない物語では末梢血管にまでヘモグロビンとか多分そういうものが届かないのだのだ! そうなのだ! そうに決まっているのだ! 断定口調はたまにやるから面白いのだ!

ユーモアは心を豊かにさせてくれるけれど、笑いと言うのはなかなか難しいものです。人気芸人だってそう簡単に爆笑百発百中とはいかないもんね。

でも、大切なのは、なんとか人を笑わせてやろう、リラックスさせてあったかい心持になってもらおうというサービス精神なのであります。そういう気持ちは必ず通じます。

汝の隣人を愛するのです。寒さの夏はおろおろ歩くのです。まずはお茶でも一杯いかがですか、なのです。おもてなしの心がないとユーモアなんか生まれません。

人を癒し、気持ちを楽にし、冷え切った感情に血を送り込み、ああ、生きてるって悪くないなあ、と思わせてくれるもの。

ユーモア、ドイツ語で言えばフモール。ヒューマン、つまり人間性とかかわりの深いこの言葉、「ユーモア」を解さない奴は大成しないぞう。ギャグやお笑いが好きとか、ジョークを収集しているとかそういうこととはまた少し違うようですな。もっと複雑で知的で、そして人間的であることが求められます。人に対する洞察力と懐の深い愛情がなきゃダメなのじゃ。

あなたがユーモアという名の他人に対する興味と情愛を残念なことにまだ持っていないというのであればそれは非常に由々しき事態であります。

ユーモアのセンスは必ずあなたを救けてくれます。

短めの白い浴衣(正式名称は知らぬ)を着て真冬の早朝に滝に打たれたり、バヌアツの若者にまぎれ足をくくって高い塔の上からジャンプするなどの難行苦行荒行を重ねながら是が非でも身につけることをお薦めしますぞ。

コミック・リリーフ

まあ、あなた自身のことはこの際おいておきましょう。大事なのはいつもながらあなたの物語の登場人物のことです。ユーモアがどこかに漂っていなければその物語は誰からも好かれっこありません。

困ったときのwikipediaにはこんな記述もあります。

「小説、映画、漫画などの物語芸術では、まじめな話ばかりで読者を飽きさせないように、またあまりに深刻な雰囲気を和らげるためにコミック・リリーフと呼ばれるコミカルな登場人物を登場させることがある。」

コミック・リリーフ。

あなたの物語にそういう機能を持ったキャラクターはいますか?

スターウォーズのロボットコンビC3POとR2D2といえば分かりやすい。チューバッカなんかもコミック・リリーフだと言えます。ストーリーを軽やかに語るために、とぼけた会話やドタバタでシリアスな展開にちょっとした息抜きを与えて読者や観客の緊張をほぐす役回りです。こういう存在がストーリーに深みを加えるんですね。

初心者は、ともすると主人公に直接おっちょこちょいな失敗をさせて「私ってドジな女の子、てへっ」みたいなことを直接言わせてしまう。これはいかん、いけませんなあ。何がイカンと言ったって、自分で自分にツッコむのは断固として禁じ手でございます。だってキモイでしょ、ひとりでノリツッコミする人って。

これでは作者のノリノリぶりが痛々しいだけで誰も主人公を好きになってはくれません。だから主人公は絶対にやってはいけないのです。禁断のテクニックの一つでありますな。

そういうヘンテコなことは、コミック・リリーフ・キャラにやらせればいいのです。

重苦しく緊迫したシーンが長く続くとだんだん肩が凝ってくる。物語の聞き手は緊張感に飽きてくる。ふとコミック・リリーフ・キャラがおかしなことをつぶやく。笑いが生まれる。聞き手はホッと息をつく。また緊迫した状況に戻る。すると聞き手は新鮮な気持ちでまた緊張感を楽しむことができる。

こういうシーンは映画やドラマでもよく目にしているはずです。こういうキャラが使いこなせるようになるとちょっとおしゃれなあなた独特の世界が作れます。

コミック・リリーフ。

それはユーモアという気配りの武器。大人の階段を一歩登るために、あなたもさっそく使ってみてください。

 

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『生成AI時代のストーリーテリング』

生成AIに対抗できるライティング技術を手に入れたければ「どんでん返しのスキル」を身に付けることです。このニュースレターでは文字コンテンツを発信したいあなたに、小説のプロットから記事の構成にまで使える『物語の技法』を徹底解説。謎と驚きに満ちた、愉快で痛快なストーリーの作り方を伝授します。