面白い物語を組み立てるためのマストなプロセスとは?


物語作り、最初は楽しくなければいけません

初心者の作品は、往々にして抽象的過ぎて、何を書いているのか分からなくなりがちです。

いかに高邁な真理が書かれていても、そこに読者の望む刺激的で興奮を誘う情動、あるいはよほど目新しい発見や衝撃的な思想などがない限り、頭でっかちで退屈な作文だと認識されるのがオチです。ですが、誰でも最初はそんなものなのです。むしろ、それでいいのです。

「物語を語りたい」「心の中で燃え上がるイメージを言葉にしたい」そんな原初の衝動がペンを握らせキーを叩かせるのですから、他人が何を言おうと関係ありません。そこに必要なのは技術よりも意志です。

あなたは何もない所からエンタメストーリーを作っていくのです。ゼロから数字を生み出すという一種の奇跡を起こすわけです。この段階で文章や絵の批判に耳を傾ける意味は全くないのです。

机に向かって最初の何百文字かを書きつけるというのはまさにそういった自分だけの情熱に身を任せることに他なりません。時間にすれば二時間ほどでしょうか。ただし、狂気の二時間です。この間はどうぞあなただけの幻想、妄想、瞑想に思いきり耽溺してください。ここは作者の時間帯です。

次の段階は読者のために

しかし、もしもあなたが次の数時間を今度は読者のために使う気持ちがあるのであれば、どうか頭を切り替えていただきたいと思います。少しでも分かりやすく、一瞬も退屈させることなく、そして可能な限り空想の翼を広げてもらうために、サービスの鬼と化して全力を尽くしてください。

初心者は取材なしで本編を書き上げようとします。これではリアリティーが生み出ません。妄想だけではバランスの悪い、非常に幼い世界しか表現できません。いかなるファンタジーであっても、大切なのは読者が生きている現実世界の常識や感覚です。そこに違和感があれば(それが意図されていない場合には特に)読んでいる人は共感を持てなくなってしまいます。

そもそもエンタテインメントというものは「人生の意味を問いかける」純文学とは違って、「人生は生きるに値する」という前提から出発します。哲学や芸術を追求するのならばエンタメに手を出してはいけません。ここは徹底的に技術だけが支配する職人の世界です。目的はただ一つ、時間を忘れて楽しんでもらうこと。

エンタメとは、不条理な人生を生きる人たち、弱っていたり傷ついている人たちを支え、癒し、応援するために求められる存在であることをけして忘れないでください。自分の主張や意見をただ発表してもしょうがないんです。読者に心の底から愉しんでもらえないと意味がないんです。

では具体的にどういうふうに考えていけば、自己満足の殻から一歩踏み出した客観的に面白い作品を、合理性を持って作り出していけるのでしょう。そのためにはコンセプトを明確にすることが重要です。楽しませるための的を絞るわけです。

コンセプトをはっきりさせよう

例えば「想定する読者は誰で、ジャンルは何で、刺激したい感覚はどれか」そんなこと考えたこともないという人がほとんどだと思います。夢も希望もない話だとがっかりされる方もいるかもしれませんね。

しかし、それが物語が面白くならない大きな理由です。

書きたいものを書くな、読みたいものを書け! と申します。

どんな人がどんなものを読みたがっているのか? その嗅覚がなければエンタメのプロにはなり得ないのです。しかも、大きな作家になりたければ、より大きなターゲットを狙うことが必要です。

そのために、あなたはどんな読者に対して作品を書いていくのか? その読者層はあなたの目標にしている人数を満足させるのか? 一度でいいから考えてみるべきです。

これは作品の質を下げる卑しい考え方だと思う方もいるかもしれません。作家たるものはそういう商業的な観点で作品を見てはいかんのだ、とプライドを持って断言する人もいらっしゃるでしょう。

いつも言いますが、そういう方は純文学を書くべきなのです。人生の意味を問い、人間の本質をえぐり出し、社会を批判し、世界に警鐘を鳴らし、人類にとっての文学の可能性を追求すべきです。

しかし、あなたが創作対象に選ぶのはエンタテインメント作品です。文学的アカデミズムとは一線を画した「大衆の娯楽」なのです。

私たちは、路上の大道芸人であり、街角のバンジョー弾きであり、薄暗い部屋にたたずむカードマジシャンなのであります。私たちが知らねばならないのは『現実世界』とそこに棲む人々。そして彼らの情念です。私たちは読者をもっと知らなければならないのです。

逆に言えば、ターゲットがはっきりすれば格段に書きやすくなります。その上で、その制約に沿ったテーマを考えます。テーマと言うのは抽象的なことではありません。

「主人公の目的は何か?」「邪魔をする敵や障害物は何か?」「主人公のゴールはどこか?」そして「主人公の意識や世界の変化をどう表現するか?」これらをそれぞれ決めたら全ての要素を一連の流れにしてください。

まずは『目的』です。主人公が何を求めて行動するのかを決めるのです。そのきっかけとして「何者かに大切な何かを奪われる」ことで目的が作りやすくなります。そうするとゴールは必然的に、『いかなる形で目的を果たすか?』つまり、「奪われた大切なものを回復する方法は何か?」という『形式』の問題になるわけですね。

「奪還」「復讐」「獲得」

物語における「目的を果たすための形式」には大きく分けて三つのパターンがあります。それは「奪還」か「復讐」か「獲得」です。

奪われたものを奪った相手から取り戻すのが「奪還」です。奪い返せない場合の欠落感の代償行為が「復讐」です。そして、奪われたものではなく新しい何かをゲットするのが「獲得」です。大概の物語の目的は以上の三つのどれかになるわけです。

さて、『敵』とは「主人公から何かを奪った者」であったり「目的を追う上での邪魔者」ということになります。ポイントはそこに「恐怖心」が存在することです。この陰りがない相手はあまり魅力的な敵にはなりません。「恐怖」こそが『悪』を生みます。

主人公はそんな『悪』を抱いた敵に対する自分の中の恐怖心と戦うことになります。恐怖に負ければ主人公もまた『悪』に染まるのです。そういう意味では主人公と敵は合わせ鏡です。そんな恐怖心を克服するからこそ戦いに意味が出てきます。そして、その克服の過程こそが『変化』なのです。

『目的』『敵』『変化』

この『目的』『敵』『変化』が決まれば物語の背骨が出来ます。

「奪われた『目的』を追う主人公が、欠落感からの回復を邪魔する『敵』と戦って、悪への入り口となる恐怖心を克服するために『変化』する」

必然的にゴールはその流れに沿って決まるでしょう。エンタメ作品のストーリーを構成しようと思ったら、まずはこの話を800文字で作ってみましょう。コツは具体的な行動や事件を設定することです。

例えば「ヒロインが本を読みながら考える」だけではあまりにも画面が動きません。そこには椅子に座った女の子がいるだけです。大切なものを奪われた主人公はそれを追いかけなければなりません。歩くにせよ走るにせよ、バイクや車や飛行機に乗るにせよ、主人公は椅子から立ち上がり、扉を開けて外に出るのです。

あくまでも具体的に。意識描写や抽象的な表現はまだまだ書いてはいけません。何が起こったか、どう行動したか。全てはまずそこから始まるのであります。

●悪と正義、どっちがどっち?

友人のシナリオライターさんからFacebook上にこんな記事があると教えてもらいました。

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

> 正義の味方と悪の組織の違い
>
> ネット上では有名なコンテンツですが、シェアしたいと思います。
> さてどっちが目指すべき生き方でしょうか。
>
> 悪の組織の特徴
> 1 大きな夢、野望を抱いている
> 2 目標達成のため、研究開発を怠らない

……(中略)……

> 正義の味方の特徴
> 1 自分自身の具体的な目標をもたない
> 2 相手の夢を阻止するのが生きがい

……続きはこちらでどうぞ。

http://on.fb.me/znogvj

悪があってこその正義の味方

上記の「悪と正義」の対比ですが、両者とも最後の1行が特に秀逸で笑ってしまいます。ぜひ読んでみてください。まあ、この記事自体は半分ジョークなんですけど、半分は非常に正確に「悪と正義」の実相を捉えています。

要するに、正義と言うのは悪に対する対症療法的な抵抗であり、悪よりもずっと狭い行動基準によって成立しているわけです。正義はそれだけで自立する現象ではなく、あくまでも先に「悪」が存在し、誰かに何らかの損害を与えるから「正義」の味方がその補償を求めて立ち上がるのであります。

そんなわけで、物語の主人公が正義の味方型の場合、その目的の大半は「復讐」か「奪還」になります。

持っていないものを「獲得」しようとしてその行為が他者や共同体に迷惑をかけた場合、その人間は『悪』として断罪されます。それがいいとか悪いとかの問題ではありません。

能動的な行為が「悪」であり「欲望」だと断罪されてしまう状況は地球上の至るところに確かに存在します。実際、目立つことが悪と同義のように扱われてしまう文化はこの日本においてもさんざん目にするところであります。

それを念頭において、状況に合った「悪役」を造型することが、あなたのキャラの説得力を増す上で重要なのです。


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