こんなご質問をいただきました。
私事で恐縮なのですが、何だか最近行き詰まってしまい、これは本当に面白いのだろうか? という負のスパイラルに陥っている気がします。そんなときぴこ蔵様はどうなされていますか? (Iさん)
ぴこ蔵です。
負のスパイラルかー、確かにありますよねえ。
私の場合、どうしても書けないという事態は、理解していない、納得していないことを無理やりやろうとした時、その面白さが分からないことによって引き起こされます。
納得できないから集中できない、自分が面白くないから自信が持てない。
自分自身の経験から言えば、これは大体の場合、ストーリーの先が見えないせいで描くべきエピソードの優先順位が決められないためではないかと思っております。
ゴールを見つけること
最初の一行目から順番に書いていく方法を取る場合でも、作者の中では、物語の結末が早い段階で見えているものです。まずはゴールを決めましょう。道順を書いた後で、行きたいのはここじゃなかった、と気づいたらあらためて書き直せばいいのです。
どんなものでも楽して作れるわけがありません。ましてや魅力あるものなんてそんなに簡単には出来ません。脳みそを絞って、苦労に苦労を重ねて、やっと手にすることが出来るのです。
自分が書きたい物語世界を隅々まで設定しようとする人がいます。暇と根性があるならそれも構いません。好きな対象のディテールを夢想するのは楽しい作業です。
あるいはこういう方は、素材の力を重要視するあまり、世界のどこに何があるのかがはっきり認識できないと何も始められないのではないかと思っているのかもしれません。
でも、そうじゃない。
物語を語ることは、あなた自身を描くことです。あなたが世界と対話することなのです。例えそこに世界の全てがデータ化されていたとしてもあなた自身の視点がなければ意味は成立しません。
物語を作るのに必要なのは地図ではありません。必要なのはあなたの「目」です。
つまり、あなたの選択と決定によってスタートからゴールまでの道順を描くことです。そのスタートとゴールの地点を決めるのはあなたなのです。
新鮮な気持ちを取り戻すこと
また、物語作りの訓練も筋肉トレーニングと一緒で、基礎体力が付いてきたらそれに見合ったぎりぎりの負荷をかけていくわけです。そうしないと成長はありません。仮筋を使って簡単なあらすじをまとめるぐらいでは、本編を作るという地獄の作業に耐えられるだけの体力が培われないのです。
最初は誰もが燃えて勉強を始めます。負荷が軽いうちは、どこまでも歩き続けられるような気がします。
ところが、やがて負荷となる課題が難しくなってくると脳が疲れてきます。疲れると、好奇心が衰えて、喜びが消えていきます。ここで大事なのは「基本に立ち返る」ことです。
自分が言いたいことよりも読者が読んでみたいことを優先して書く。そのために作者はまず、良い読者である必要があります。自分の好きなジャンルの作品ばかり読んでいては視野が狭くなって、新しい発見が出来ません。
私の試したスランプ脱出方法の中で有効だったのは、これまで読まず嫌いだった小説やマンガ、名前も知らない監督の映画を鑑賞することでした。もう一度、頭の中を好奇心でいっぱいにしてやること。そして、良い読者として、再び物語を好きになることがリフレッシュにつながったように思えます。
そんな感じです。