物語を効率的に組み立てる魔法「フィードフォワード」


「伸びる人は、素直である」と先人は言いました。疑うことなく素直に学ぶ。 そして、学んだことを素直に実践してみる。そういうパターンこそがあなたを最も速くスキルアップさせます。贈られた知識を素直に受け取ったとき、あなたの行動様式が変わります。そして、行動パターンが変わったとき、あなたの人生も変わっていることに気づくでしょう。

物語作りはフィードフォワード

2014ソチ、2020東京と五輪がらみで自分の中のスポーツ熱が上がり始めたので(笑)いろいろ調べているうちに「フィードフォワード」という言葉を耳にしました。ググってみて驚きました。物語作りにとって非常に重要な示唆を含んでいたからです。ちょこっと説明させていただきましょう。

※参考記事:日経ビジネスオンライン
東大生と学ぶ“運動音痴”の治し方
最先端科学で知る運動と脳--柳原大・東京大学大学院情報学環・准教授
(前編) 
(後編) 

そもそも、商売にしてもスポーツにしても、習いはじめは、誰しも誰かの動きを真似ます。しかし、自分と他人は違うので、同じようにしているつもりでも見よう見まねでは完全に同じ動作は再現できません。脳の中で精度の高いプログラムが作成されていないからです。

何かに熟達するためには、その作業の細部が脳内でプログラム化され、さらにそれらが状況に応じて更新されていかなければなりません。「自分にとって最適な方法」を獲得する過程こそがスキルを上げるための最重要ポイントなのです。

それでは、どうすれば最適な方法を身に付けられるのでしょうか?

フィードバックとはどう違う?

私たちが何かを上達しようとか、もっと熟練してさらにいい結果を出したい場合、一般的に「フィードバック」という方法を取っています。誰でも「フィードバック」という言葉はよく知っていますよね。何かを実行したその結果を、自動的に実行段階に反映させて、結果を調整すること。

ビジネスに例えれば、男性アイドルを使っておしゃれなスーツの広告を作ってみたが、思ったほどの売り上げがなかった。だから、今度は、女性のキャラクタを立ててみることにした。――というように、何かをした結果についてだけでなく、結果を導くための計画立案や実践行動の反省点についての情報を伝達すること。

スポーツに例えて言うと野球のピッチャーが、カーブを投げようとして球の握りを変えた。その結果、球は思ったよりも曲がりすぎてボールになった。そこで少し握り方を直した。すると丁度いいカープがかかって打者は空振りした。

――この一連の動作での「そこで少し握り方を直した」こと。これがフィードバックです。

フィードバックの限界

何でもいいからとにかくやってみる。そして、その結果が出たところで、他人の意見を聞くなどしてやったことの効果のほどを検証し、次はそれを踏まえてやり方を変えていく。この方法は、いかにも確実で完璧に思えます。ところが、このフィードバックには修正に時間がかかりすぎるという欠点があるのです。

例えば、テニスプレイヤーは200キロくらいの速いボールを平気で打ってきます。その時にいちいち「どれくらいの強さで」「いつラケットを振るか」などとという行為をフィードバックに頼って行うとしたら、時間がかかるどころか、一歩も動くことが出来ません。

それではクルム伊達公子選手はなぜあんなにデカい相手の恐ろしい速度のサーブを簡単に打ち返してしまえるのでしょうか?

実はそんな時、人は感覚のフィードバックを使っているのではなく、あらかじめ目標値を決め、それを行動に落とし込むという「フィードフォワード」を行っているのだそうです。

フィードフォワードとは「脳からの出力によって動作の内容を事前に決めておき、それを実行することによってシステムを直列的に制御する」という意味です。簡単に言いますと、「力の入れ具合はこんなものかな」「もう少し速く振ってみっか」など、いちいちチェックしながら行動するフィードバックに対して、フィードフォワード制御は、予測をそのままなぞるような方法論です。つまり、ヤマ勘みたいなもんですな(^^

例えば誰かとハグする場合、「どのくらいの力で抱きしめるのがベストか?」なんて考えませんよね。自分の出す力を加減し、どれだけ抱きしめたら、相手からどの程度抱きしめ返されるかが経験的にわかっているのです。

そうでなければ、路上で抱きしめあったカップルは、いつ「サバ折り」合戦になってしまうか戦々恐々としてしまい、愛をささやくどころか空いている足でヒザ蹴りを入れあうというとんだ総合格闘技マッチになってしまうではありませんか。馬鹿なこと書いてすみません。

好きな人とそんな修羅場を迎えたくなければ(笑)予測と出力の連動精度をあげることです。

フィードフォワードを使った物語作り

最初はフィードバックに頼っていても、練習を繰り返すうちに、すばやく自動的に行動を選択できるようになります。フィードフォワードのシステムが完成するわけです。

ぴこ蔵流の「どんでん返しという型から物語を作っていく」手法はまさにこの「フィードフォワード」理論に則っています。まずは「転」を作り、それから始まるクライマックスを予測し、オープニングやミッドポイントはそこに向かって準備を整えていくつもりで書く。

そうでなければエピソードの緻密な連動は出来ません。何も知らないような顔をして、実は最後まできっちり計算しておく。それがエンタメのスキルというものです。そして、そのすばやい連動の精度向上に不可欠とされるのが「自分は何を間違ったか」という誤差情報なのだそうです。

私たち人間という生き物は、「誤りを通じてしか適正な行動を獲得できない」存在なのであります。予測に応じた目標に乗っ取って行動し、即時に誤差を修正し、すばやく適正な選択をすること。これは「効率の良い物語作り」においても重要な指針となります。プロを目指すのなら特に「生産力」は大きなキーポイントですからね。

自分のパフォーマンスを正しく知る

それでは「エンターテインメント物語」を作る上での誤差とはいったい何でしょうか?

物語を語る上で最悪なのは「相手を喜ばせられない」ことであります。そもそもはけなされたくないから自信のないことや苦手なことには極力触れないようにする。だから少ない経験の中から好きなことしか書けない。しかし、それでは当然面白くならないために期待したほどの評価は得られない。

そこで、親しい仲間同士で見せ合って褒め合うようになる。しかしそのうちに身内の回覧だけでは飽き足りなくなってくる。そこで思いきって賞に応募するがまったく反応がない。結局、へこむ。もう書きたくない……。

笑い事ではありません。これは誰しもが必ず通る道なのです。私もそうでしたし、今でも大いにそうなのかもしれません。多かれ少なかれ、ものを書くということはそういう「ギャップ」にぶつかることであり、現実を知ることであり、自分の小ささに気づくことなのであります。

人間なんてものは、一人だけで生きていくには弱すぎる存在なのです。だからこそ、そこに「他人を喜ばせる」という大義がなければすぐにスランプに陥ってしまうのです。

楽しむことが最大の奥義

気をつけなければならないのは、何でもいいからがむしゃらにやったとしてもいい結果にはつながらないということなんです。

ちょっと失礼な例えになるかも知れないんですけど、「追跡犬」という、逃亡する密猟者などを追いかけて探し出す犬がいます。いわゆる警察犬とは少し違って、正確に服従させる訓練ではなく「追跡犬」には好き勝手し放題にしか見えないトレーニングを施すのです。足跡を追跡させるということは、犬にとって遊びである以上、楽しくなくてはならないのであります。

そして、無事に足跡を追跡し終わった時には、干し肉がもらえる。臭いを嗅いで足跡を追うことは「遊び」、そしてうまくいけばおいしいご褒美ももらえる。だから、犬たちは追跡するのが楽しくて仕方ないのだそうです。なので、訓練はその遊びと楽しさを強調させることがコツなのです。楽しくなくなってしまったら、追跡はしなくなってしまうから。

私たちも「遊び」にかけては彼らと同じです。「とにかく力の続く限りゴリゴリ書け! 面白くなくてもかまわん!」そんな精神論の濫用は、結局のところ自己中心的で不毛なパフォーマンスしか生み出せないと思います。何事もプレッシャーやノルマではなく、「おもしろいなあ」と思えることが大事なのです。オリジナリティも達成感も、まさにそこから生まれるわけですから。

あなたは、物語を予測に応じた目標に乗っ取って書き、面白くないなと気づいたらすぐに誤差を修正し、読者を喜ばせるための適正な選択を行っていますか? そして何よりも、そのことを心から楽しんでいますか?

さあ、今日も思いっきり楽しく「面白い物語」を作りましょう!

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