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主人公のどんでん返し

「主人公のどんでん返し」ってあり得るの?

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こんなご質問をいただきました。

「主人公が死んだと思っていたら、生きていた」というのは、どんでん返しタイプで言うとどこに属するものでしょうか? 敵が死んだと思っていたら生きていた、というパターンの亜種ということでしょうか? それとも、どんでん返しにはならないのでしょうか? (PN 水戸のご老公)

ぴこ蔵です
素晴らしい! いい質問ですねえ! さすがはご老公様じゃ、ありがとうございます。まず結論から申し上げますと「主人公は死んだと思ったら、実は生きていた」というパターンでは、「どんでん返し」にはなりません。

もちろん、ストーリーの分析には「これが正解!」というものはありませんので「主人公のどんでん返し」という分類も条件次第ではあり得るのかもしれません。

しかし、ぴこ蔵流には「どんでん返しから物語を作っていく」という独特の枠組があります。ぴこ蔵流の物語創作術における「どんでん返し」とはストーリー全体の構造を決定付ける「扇の要」なのです。

そんなぴこ蔵流の手順に沿って創作しようとすると「主人公が死んだと思っていたら、実は生きていた」という仕掛けにはどんでん返しのタイプとしては奨励しづらい理由があります。

なぜでしょうか?

「敵のどんでん返し」においては、基本的にここからクライマックスが始まり、ここで回収することを前提に伏線が敷かれます。(「目的のどんでん返し」では少しタイミングがずれます)

どんでん返しは、オープニングにもエンディングにも強い影響を与えるターニングポイントなのです。

そんなぴこ蔵流の手順に沿って創作しようとすると実例の仕掛けを「どんでん返し」であると認定するにはなかなか難しいものがあります。

その理由が2つありますので説明していきましょう。

どんでん返しにならない理由その1

その理由の一つは、どんでん返しが成立したその瞬間、ストーリー上では新たな問題が発生しなければならないということです。

どんでん返しが発動した時、信じていた世界の枠組ががらがらと崩れ落ち、そこまでの流れとは全く異なる展開が始まるのです。

突然、死んだと思い込んでいた怪盗が姿を現したら名探偵はとにかく気を取り直してそいつを捕まえなければならないわけです。必死に探していた目的物が実は存在しなかったことが分かったら探していた人は、これからどうするかを早急に考えなければなりません。

新たな問題の発生。だから読者もパニックに襲われるわけです。とんでもない展開に焦ってしまうわけです。こうやって枠組を破壊し、新たな危機が訪れることによってクライマックスの幕をドラマティックに引き開けるのもどんでん返しの重要な役割の一つなのです。

ところが、「主人公が死んだと思っていたら生きていた」ということになるとそこまでは概ねいい感じで(笑)危機が世界を覆っていたのに、一気に逆転楽勝ムードに支配されてしまいますよね。

その後の展開が「これで主人公が勝てる!」というイケイケモードに突入してしまうわけです。つまり……

クライマックスシーン、悪事の達成を前にして喜ぶ悪党。しかし、その時、死んだはずの主人公が現れた!

「お、お前は死んだはずでは……」
「馬鹿め! 悪事を粉砕するために、俺は地獄から蘇ってきたのだ」

……と、いう感じの流れになります。

主人公が死んでいなかったことによって一番びっくりするのは「敵」である対立者であります。で、問題はこの後です。たいてい、生きていた主人公の活躍により悪は滅び、問題は無事に解決されるわけです。

このように、主人公の目的達成の障害になっていた問題が解決される場合、そのどんでん返しは「敵どんでん」の亜種でも「目的どんでん」の亜種でもありません。

分かりやすくするためにあえて名前をつけるとすれば、主人公の「切り札」ということになります。切り札」とは物語のクライマックスにおいて主人公が問題を解決するための方法です。

たとえば、主人公が何かのトリックを用いることにより、「主人公は死んでしまった」と敵を油断させておいて倒すわけです。

『主人公が死んだと思っていたら生きていた』という、形としてはどんでん返しに良く似ている仕掛けですが、「切り札」の機能や目的は大きく違います。

「どんでん返し」が難題を発生させることを目的とするのに対して「切り札」は問題解決を目的とするからです。

主人公の生還が「問題解決」を促すケースが多いことを考えると、『主人公が死んだと思ったら、実は生きていた』という仕掛けは主人公にピンチをもたらす「どんでん返し」としては用いにくい、ということが言えると思います。

どんでん返しにならない理由その2

もう一つの問題は読者の心理的な抵抗です。

「主人公が死んだ」という前提を読者の心情に即して考えた場合、どんでん返しとして成立させるためにはあまり効き目があるとは言えません。

なぜなら、「主人公の死」というトリックを読者が完全には信じないからです。そもそも読者は、常に、主人公が死なないことを前提に読んでいます。本当に死んだ場合でも最後の最後まで疑っています。せっかく感情移入した(つまり愛している)主人公の死をなかなか受け入れてくれないのです。「絶対生き返ってくれるはず」と思っています。

名探偵シャーロック・ホームズは宿敵モリアーティ教授と格闘した挙句滝に落ちて死んでしまったということになっているわけですが、これをよしとするシャーロッキアンは世界中に一人もいないと思います。

「ホームズが死ぬわけがない」のであります。一時的に行方不明になっているだけで必ずまた登場すると信じているのです。愛読者と言うのはそういうものです。あしたのジョーは死んだのではありません。「燃え尽きて灰になった」のです。ですから、ライバル力石徹のお葬式は盛大に開かれましたがジョーの葬式は行われていません。

人気のある歴史的ヒーロー、例えば、源義経や坂本竜馬もののドラマをやる時は「彼らを殺さないでくれ」というメッセージが日本中から届くほどであります。

読者は主人公の死を望みません。したがって、死んだと言われる主人公が「実は死んでいなかった」というどんでん返しを発動したところで読者を驚かせる効果は薄いものになります。「ほらやっぱり」という事になってしまうからです。

読者はそうなることを信じて待っていたわけですからある意味で当然の展開にすぎないのです。自分を投影し感情移入している読者はなかなか主人公の死を受け入れないのであります。

主人公が生き返った時点で読者は喜んではくれるが、あまり驚きはしないわけです。なぜなら読者は、そもそも前提である主人公の死を全く受け入れていないからです。むしろ常に主人公が生き返ってくることを望み、心のどこかでそれを待っているのです。これでは「衝撃のどんでん返し」とはなりませんね。

結論でございます

ぐだぐだいろんなこと書きすぎたので本論だけもう一度、整理しておきましょう。

Q:「主人公のどんでん返し」はどんでん返し足りうるのか?

A:以下の理由から、基本的に私は「どんでん返しのパターン」としてはお勧めしません。

どんでん返しの成立要件は以下の通り

(1)どんでん返しはクライマックスの直前に起きる
(2)枠組みを壊し、新たな次元の問題を提示する。
(3)クライマックスに導入する。

まとめますと、このどんでん返しが成立するには、主人公が生きていたことによって枠組みが壊れ新たな問題がが発生するかどうか、が大きなポイントです。

しかし、大体の場合「主人公が生きていた」という状況は、そのことによって敵をやっつけるなど問題解決のために使われることが多いため、むしろこれは「切り札」であると言えるでしょう。

また、これが物語の最後に来れば「意外な結末」となります。どんでん返しではありません。

主人公とは何か? という定義も大事

例えばトマス・ハリスの小説「レッド・ドラゴン」の中心人物はまぎれもなくレッド・ドラゴンですが、主人公というのは、読者と立場を同じにして同じ謎を解明し、同じ問題を解決していこうという方向性を持っている存在なわけです。

ところがレッド・ドラゴンは謎を撒き散らし、問題を発生させるばかりです。

したがって、レッド・ドラゴンは主役ではあるが主人公ではないと言えるのです。

読者がストーリーの中である問題を追いかける上で、同じ運命を感じ自己を投影し、物語に身を任せるためのガイドが主人公です。「主人公が死ぬ」というトリックを使う場合、その間は主人公の視点は消失するので、主人公の一人称だけでは絶対に語れません。

主人公の視点が消えた瞬間に物語が終わるわけですから。

そんな時はホームズに対するワトソンのように語り手を設定して、主人公の視点が消失しても大丈夫なようにするわけです。

この高く厚い壁に果敢に挑戦するのはすばらしいことだと思います。トリックのひとつとしてこういうスタイルはあるのでしょうが、ただ、作り手側から見た場合はなかなかむずかしいのであります。

そんな理由で「主人公が死んでいると思ったら生きていた」は、汎用的などんでん返しのタイプとしては積極的に勧めにくいと言えます。

 

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物語のクライマックス

物語のクライマックスはどう作ればいいの?

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Rさんからこんなお悩みが届きました。

今描いてる話があって、結局盛り上がりとか最後のオチが読めちゃうんですよ。彼と上手くいってない主人公。他の子と仲良くしてるのをみて、彼が信じられなくなる。そこで占い師から恋愛に効くブレスレットを買うが、本当に効いちゃって、彼氏がストーカーになってしまい、殺されかける。 (えらいダークだな) 彼を信じる事でブレスレットの効果が解かれ、彼の心を取り戻すって感じなんすが、ちょっと無難過ぎてオチが読めるんですよねー。

ぴこ蔵です
なるほど。ヒロインは道具を使って男の心を操作するわけですね。うーん、ずいぶん調子のいい女(笑) その天罰として「彼氏がストーカーになっちゃう」という展開はとっても面白いですね!

彼の心を取り戻す、という結末は予定調和でいいと思います。読者もそれを期待しているはずです。ただ、「彼を信じる気持ち」を絵にするのがけっこう難しそうです。

同じく「ブレスレットの呪いが解かれる」くだりをいかにドラマチックに表現するか。これらをいかに視覚化するかがポイントだと思います。このままだとクライマックスに問題が出ます。

例えば――

●主人公が「彼を信じるのよ!」と独白して、 目を閉じて祈る

●彼氏が突然「うぐっ」と言って気を失い、目が覚めると「どうしたんだ俺? ここはどこ?」などと言ってまともになる

――みたいに、
アクション的に物足りないシーンになってしまいかねません。

「オチが読める」というよりも「よく見るシーンなので『またこの手かよ!』と読者に飽きられる」と言った方がいいのではないでしょうか。

クライマックスを強烈で具体的なアクションで構成するのが大切です。例えば、ブレスレットの魔力を食い止める「切り札」をあらかじめ用意しておくとクライマックスがうまく運びます。

まずは「切り札」を考えてみましょう。そして「切り札」を手に入れることによって、ブレスレットの呪いを断ち切るためには「信じること」が必要だという情報がわかる設定にすれば話がうまく転がると思います。

また、タイムリミットを強調することでぐっと盛り上がります。例えば「鬼ごっこで鬼に捕まる」というのがタイムリミットです。

つまり、クライマックスは、殺人ストーカーと化した彼氏から逃げ回りながら「切り札」を手に入れたヒロインが一か八かの行動に出るという展開にするといいでしょう。

具体例を作ってみましょうか。ではちょっと不思議で、軽くダークに行ってみよう!

<クライマックスの例>

この場合「切り札」は「彼を信じなさい」という情報を持っていなければならないのでメッセンジャーとしての役割も一緒に負わせます。「しゃべれる存在」であったほうが効率がいいわけです。

しかし、普通の人間がこの不思議なブレスレットの秘密を知っているとなるとその関係の説明にまた手間がかかります。そこで、「このブレスレットの本当の持ち主」というか「魔力の源泉」である存在を設定してみました。

▼例えば…「切り札」は「幽霊」

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

ヒロインは夕暮れで無人となった校舎を逃げ回りながら音楽室にたどりつくと、無人のピアノが曲を奏で始め「切り札」である『幽霊』が現れます。

そして幽霊はそのブレスレットが実は自分のものであること、呪いを解くためにはある行動を取る必要があることを語ります。

その行動とは、階段の上から「彼氏」に向かって身を投げること。信じていれば出来るはずだと幽霊は言います。

「誰も信じられなくなったから私は死ぬしかなかったの。信じる勇気がなかったことを今はとても後悔しているわ。だからあなたには信じてほしい。自分の恋を貫く勇気を持ってほしいの」

意を決したヒロインは階段の上で、ストーカーと化した彼氏を待ち伏せし、彼が姿を現した時、思いきってダイブするのです。その瞬間、ブレスレットが光を放って砕け散り、我に返った彼氏はヒロインの体を抱きとめます。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

かなりドラマチックになりますね(^^ なにしろクライマックスですからね。このぐらいやらないと読者は面白がってくれません。

「切り札」は物語の最初の方でさりげなく紹介しておくことが大切です。このあたりの伏線も凝ると楽しいですね。

例えば
「音楽室に女生徒のお化けが出る」「お化けは『ラベンダー畑』という曲が好き」「ピアノでその曲を弾いていて幽霊を見た人がいる」みたいな噂。(曲は著作権の問題がありますので架空のものがいいでしょう)

ついでにタイトルもその曲名にからめるとぐっと練られた感じになります。内容はホラー仕立てではありますが、「恐怖のブレスレット」とかの直接的な題名よりも「ラベンダー畑でつかまえて」みたいにちょっとズラした方が味わい深いと思います(^^;

●意外な結末

クライマックスが終わったら意外な結末を作りましょう。

「意外な結末」とは「新たな問題の発生」です。例えば、砕け散ったはずのブレスレットが元通りに復元されていつの間にか「占い師」のお店でまた売られており、それを手に取った女の子が興味深そうに見つめている……。

以上です。お粗末でした。

 

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ゲームクリエイターのあなたへ

ゲームクリエイターのあなたへ エピソード作りに苦労していませんか?

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ゲームにはたくさんのストーリーが必要です。

最も大量にエピソードを消費するジャンルはゲームシナリオです。プレイヤーを退屈させないためにも、雰囲気やテイストの異なるミッションが次々に発生しなければなりません。

それなのに、あなたのゲームではどれも同じような事件ばかりが起きてはいませんか?

似たようなアイテムをいつもと変わらぬ理由で探し回るだけのゲームになっていませんか?

それでは他のゲームと見分けがつきません。

RPGは大量に流通しています。ユニークかつ豊穣な物語世界を構築しなければ、いとも簡単に他の競合作品の中に埋没してしまいます。そうなれば目立つこともなく、たくさんあるゲームの1つとしてすぐに忘れ去られてしまうでしょう。

あなたのゲームが「これはすごい!」「見たことがない!」「感動する!」「びっくりした!」などの賞賛の声に包まれてランキング上位に駆け上がるためには、面白いエピソードが大量に必要なのです。

エピソードに必要なもの

ドラマティックなRPGを作るには、一つ一つのエピソードを面白いものにすることが絶対条件です。

読者の興味を掻き立て、大きな目的に向かって引っ張っていく必要があります。

でも、どうやって?

その一つの答えが「どんでん返し」です。RPGのエピソードに、ミステリーやサスペンスの必需品を仕掛けるのです。「どんでん返し」は高度な技術ではありません。むしろ、面白い話を作るためには最低限必要な要素だと言えましょう。

どんでん返しの効果

あなたは自作のゲームにどんな特長を盛り込もうとしていますか?

爆笑ギャグ? 斬新な世界観? それともかわいいキャラ? 確かにどれも魅力的ですね。

ただし面白いギャグや素敵なキャラクタでバズるには、特別な運と並外れたセンスが必要です。誰もが売れっ子お笑い芸人や人気漫画家になれるわけではないことはあなたもご存知でしょう。

ところが、物語に謎やスリル、そして、エンタテインメントに何よりも必要な「意外性」つまり、アッと驚くサプライズを取り入れるテクニックは、手順通りに型を守れば、誰でもすぐに身に着けられるのです。

そんな技術の一つが、あらすじドットコムが開発した『10タイプのどんでん返しパターン』です。

ゲームシナリオをテキストで読んでも分かりづらいのは当然です。そこで雰囲気を感じてもらうために、RPGツクールを使ってどんでん返し入りのストーリーをゲーム画面風に仕立ててみました。

桃太郎にどんでん返しを入れてみた! その1

桃太郎にどんでん返しを入れてみた! その2

どんでん返しを入れるとこんないいことが!

考えられるメリット

・RPGゲーム作家として一目おかれる
・アクセスアップ
・ランキングがあがる
・シナリオ作りに困らない
・創作時間の短縮
・ユーザが満足する
・ユーザーを楽しませる
・リピーターが増える
・ファンができる
・収入アップ
・人気作家になる……などなど

ストーリーにどんでん返しを仕掛けるのは簡単です。誰でも確実に作るための技術があるからです。

それなのに不確実な運や、評価の定まっていない才能だけに頼るのは、効率的な戦略とは思えません。

すでに存在する技術を取り入れないのはあまりにももったいない。そのスキルを学べば、作品の評価がぐんとアップするのですから。

さあ、あなたも自分のストーリーに「どんでん返し」を仕込むことによって、確実に面白がってもらえるゲームを作りましょう。

 

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面白くない物語の作り方

面白くない物語の作り方2

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あらすじドットコムはアートではなく技術(クラフトワーク)を研究するサイトですが、だからと言ってあなたの物語の芸術性を軽視しているわけではありません。

完璧な芸術作品を作るというのは、作家という存在理由にも関わる重要な目標であります。

ただし困ったことに、芸術性を最優先すると細部まで徹底的にこだわらざるを得ず、初心者ならずともなかなか作品が出来ません。

あのサグラダファミリアのように、完成までに何百年もかかってしまう場合さえあります。

しかし、実際問題、ショートショート1本書くのに3年もかかっていてはヤバいわけで(^^;

エンタテインメント作家を目指すのであれば、作品はできるだけ素早く作るべきでしょう。生産性というのはとても大事な要素なのです。

とはいえ、読む人に楽しんでもらえる娯楽作品を作るというのは、芸術に負けず劣らず手間と時間のかかる作業であります。

作者は地味な取材をして、集めた資料をじっくりと読み込み、個々の素材を膨大な時間をかけて吟味し、事実かどうかの裏を取ったりして、やっとこさ物語作りにこぎつけます。

ところが、本当の問題は実はそこからなんですよね。

せっかく労力をかけて書いたのに、その物語が誰にも面白がられなかったとしたら、創作活動にかけた日々は全て無駄になってしまいます。

「うん、よく調べてるなあ。でも、面白くない」
その一言でボツ。理由は簡単。面白くないと読んでもらえないからです。

でもね、面と向かって面白くないと言われるのはまだ幸運なんですよ。まがりなりにも誰かが読んでくれて評価までしてくれたんですから。

無名の新人が何かを書いたとしても、多くの場合、誰からも何の反応もありません。

石を投げ込んだはずの水面はシーンと静まり返っております。冷たく凍りついております。波紋一つ立つもんじゃありません。

あ~あ、大長編書いちゃったのに……
つまんないなら先にそう言ってよ……

面白くない物語はこのように大変危険です。もしかしてあなたにも同じような経験があったりするのではないでしょうか?

しかし一方では、短時間のうちに書き上げられたにもかかわらず、高い評価を得ている作品があります。アタマに来ますよねえ、まったく。

誰もがきっと思っているはずです。

面白い物語を次から次に書きまくる作者はいったいどんな創作活動をしているのでしょうか?

どうすればもっと効率的にストーリーが書けるのでしょうか?

どんな物差しを使えば書き始めの早いうちに失敗を回避し、進行方向を修正できるのでしょうか?

面白さをチェックする指標とは?

通常、作者は自分のストーリーがどの程度の効果をあげているかを測るためのさまざまな指標を持っています。

この指標こそはあなたの創作活動にとっての生命線です。

自分独りだけでモヤモヤしてても仕方がないのであります。読者からちやほやされない秘密を知りたければ……

まずは指標に従ってあなたのストーリーがウケない原因を分析し、だめだったところを把握しましょう。

さっそく以下の「面白くない物語の指標」の中で心当たりのあるものにチェックを入れてみてください。

☑ オープニングに躍動感がない
☑ 物語に敵(対立軸)がいない
☑ 敵の動機がテキトーすぎる
☑ 敵が怖くない
☑ 敵が憎たらしくない
☑ 主人公に真の目的がない
☑ 主人公に義務がない
☑ 犠牲者がいない
☑ 深甚な被害が発生しない
☑ 登場人物の役割がはっきりしない
☑ 興味をそそる謎がない
☑ 伏線が張られていない
☑ 歓びやときめきの描写がない
☑ 主人公に深刻な危機が訪れない
☑ 解決すべき問題が曖昧である
☑ 出来事が拡散するだけで収束しない
☑ 逆転がない
☑ ツイストがない
☑ 主人公が反転攻勢に出ない
☑ タイムリミットがない
☑ ハラハラさせる場面がない
☑ 誰も謎解きをしない
☑ 伏線が回収されない
☑ 解決すべき問題がグダグダ
☑ 問題解決の切り札がない
☑ 犠牲的な精神の発露がない
☑ カタルシスがない
☑ 主役の内面が変化しない
☑ 結末が予定調和すぎてバレバレ
☑ 心を震わせるような感動がない

※関連記事

チェックはいくつ付きましたか? もし10個以上付いたのなら……残念ながらその作品はエンタメとしての体をなしていないのではないかと思われます。

もちろんその作品の芸術性を云々するわけではありません。人間の生きる形に正解は無数にあるわけですから。

しかし、誰もが楽しめる娯楽を作る職人の世界は偏屈です。読者の要求が満たされない場合は一定の技術レベルに達していないとみなされます。

つまり、それは「面白くないストーリー」なのであります。

それでは上記の問題をクリアするにはどうすればいいのでしょうか?

あなたの作品にゴールはあるか?

この記事を読んでいるあなたなら、ストーリーに具体的で明確なゴールを設定することがいかに大切か、私が日頃からどれほど大汗をかいて力説しているか(笑)よくご存知でしょう。

それは、作者がついつい「曖昧な」ゴールを設定してしまうことが多いからです。

そして、それを達成するために主人公がとるべき具体的な手段がはっきりしないのはなぜなのだろう、と悩むわけであります。

なぜ主人公がどうすればいいかわからなくなるのか、なぜストーリーが前に進まないのか、と悩むのです。

何度でも言いますが、それはまさに、物語のゴールを具体的かつ明確に設定していないからなのであります。

しかしそれは、書きたいことが見つからないからではありません。

むしろ逆です。

あれも書きたい、これも書かないと、と欲張り過ぎてしまうからなのです。

書きたいことが多すぎて、そのためにピントがズレて本当の目標がぼやけてしまうのです。

では、あなたが物語のゴールを限定し、それを明確な言葉にしているとします。

また、そのゴールに近づくために主人公が選択すべき一連の行動ステップも書き出しているとします。つまり、因果関係に則ったプロットですね。

では、次は何をするべきなのか?

主人公がゴールを達成するための行動ステップはもうわかっています。

しかし、そのゴールに到達する「説得力」や「納得感」を上げる方法がまだ不確かではありませんか?

ストーリーテリングに不可欠な「読者の共感」を誘いながらゴールを達成するためにはどうしたらいいのでしょうか?

そこで、あなたの作品をできるだけ具体的かつ効果的に成長させる方法についてお話しします。

端的に言いますと、あなたが感動した他人の作品を作者としての角度から見ることで、その技術を盗むのです。

名作の感動を取り込み、再現することで、あなた個人の力量の限界を突破するのです。

そうすれば、これから書くつもりの物語に今まで思ってもみなかった豊かな広がりを与えられるでしょう。

作者として自立するために、あなたが最初になすべきことは「自分自身の技量の客観視」です。

そのためには、世界中が認める大作家の名作を分析し、そこですでに明らかにされているスタンダードな技術を再現することです。

大作家と同じ技術を使ってみることで、あなたは彼我の実力の格差を実感できます。

自分に何が足りず、どこが間違っているかが把握できます。

学ぶという言葉は「真似ぶ」という古語がルーツです。

謙虚に、一生懸命に真似をするのです。

テクニックというものはそうやって初めて身につけることが出来るのです。

あなたのストーリーを成長させるには

何はともあれまずは名作を読んでください。

もちろん名作映画やマンガでもいいのですが、あなたが物語を作る場合、最初はとりあえずアイデアを文字にすることになります。

テキストにする手間を考えると小説、それも最初はあまり長くない作品がいいでしょう。

名作として評価の定まった短編小説を時間をかけてじっくり鑑賞してみてください。

これは面白いと思う作品が見つかったら、今度はそのストーリーを解析しましょう。

どの部分がなぜ面白かったのか?

どうして面白いと感じたのか?

その仕掛けを徹底的に調べ上げて名作の謎を解明するのです。

解析できたら面白かった部分を真似しましょう。舞台や小道具や登場人物を変えて書き出してみてください。

O・ヘンリや芥川龍之介や志賀直哉の名作を、筋立てだけそのままで、あなたが好きな舞台や小道具やオリジナルのキャラクターを使って書き直すのです。

何のためにそんなことをするのかと言ったら、そのアイデアを盗むためです。盗むというのは、自分の作品の中で同じ技術を再現することです。

その結果、名作と同じ効果を生むことが出来たら、あなたはそのテクニックをゲットしたと言えます。

それを確かめるためにも、身近な誰かに読んでもらうといいでしょう。

名人と同じ技術を使ったのですから誰からも「面白い!」という感想がもらえて当たり前です。

もしも面白がってもらえなかったら、あなたはその技術をマスターできていないということです。

また、もう一つ重要な条件として、ネタ元がバレたら失敗です。

「あれ? これって『賢者の贈り物』だよね?」と言われたらそこまでです。それは再現ではなくてほとんどコピペですからね。

あなたがすべきなのは「面白さの本質だけを再現する」ことです。

そのためにはいかにうまくアレンジして本家の匂いを消せるかということがポイントです。

元ネタがバレることなく「面白い」と言ってもらえるまでチャレンジし続けましょう。

ただし、うまく再現できるものばかりとは限りません。ちなみにO・ヘンリ『賢者の贈り物』は誰がどうアレンジしてもほとんどネタバレするという恐るべき完成度を誇る作品です。一度ぜひ挑戦してみてください。

この練習をすると、あなたが今までに考えたこともないような話が飛び出してきます。そして、ストーリーに対する視野がぐっと広がります。

あなたは本当に面白い話を作りたいですか?

面白い作品を作りたければ、まずは面白い作品を見つけてください。そしてその面白さを盗んでください。面白いストーリーを作るための、おそらくこれが最短の近道です。

漠然と捉えていた「面白さ」の形を明確に把握して、その本質だけをきっちり盗めれば、それがあなたの実力査定になります。

元ネタがバレたり真似すらできないうちは、まだまだあなたの視野が狭いということです。練習を積んで観察眼と表現力、そしてオリジナリティを養ってください。

 

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対立時を2つ作る

対立軸を2つ作ろう

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ストーリーに事件が足りない。
登場人物が行動してくれない。
話がちっとも前に進まない。

そんな悩みがあるのなら、ぜひ使いこなして欲しい法則があります。

それは主人公と対立する存在を作ることで発動します。

ただし、対立軸は2種類必要です。

対立軸を2つ作ることによって、やることがなくてじっと立ち止まっていたキャラクターがゴールに向かって走り始め、その連鎖反応がドミノ倒しのようにつながっていきます。

『2つの対立軸』は、ゴールを設定することによって全体のプロットを一挙に構築してしまう法則なのです。

これを導入すれば、あなたの物語は必ず動き出します。

嘘だと思ったら試してみてください。最初はちょっと小難しいけど、それだけの価値はあります。

 

2種類の物語タイプ

物語のタイプには『破壊』をゴールに設定したものと『和解』をゴールに据えたものとがあります。

強敵を倒すのが主人公の最終目標だという場合は「破壊がゴールの物語」です。

人格のない障害を克服するまでの顛末。例えば、アイガー北壁を登ったり、アルカトラズ刑務所から脱獄したりするのもまた「破壊がゴールの物語」です。

要するに、不倶戴天の絶対的な敵であるとか、自然現象や物理的な環境という意思の疎通が図れないような対象をブレイクするのが目的のストーリー。

それが『破壊の物語』です。

対して、ケンカ相手と仲直りするのが主人公の最終目標だという場合は「和解がゴールの物語」となります。

片思いの人に勇気を出して告白して受け入れられるのも「和解がゴールの物語」です。

要するに、もともと愛情を感じていたり、話し合って妥協する余地があるのに関係がうまくいっていない相手と、理解し合い許し合うのが目的のストーリー。

それが『和解の物語』です。

作者がどちらのタイプの物語を作りたいかによって、2つの対立軸の優先順位が替わります。

 

2つの対立軸

では、その『2つの対立軸』とはいったいどんなものなのでしょうか?

それぞれの対立軸の性格は次の通りです。

X:最終的に主人公が破壊することによって解消する対立軸

Y:最終的に主人公が和解することによって解消する対立軸

説明の便宜上、Xのほうを『破壊の対立軸』、Yのほうを『和解の対立軸』と呼びます。

ここで注意してほしいことがあります。ストーリーの対立軸は、対立それ自体が目的ではありません。二つとも、解消することを目的に作られた対立軸なのです。

ここがポイントです。ちょっとこんがらがってしまうかもしれませんが、ここをしっかりと理解してください。

物語というのは「対立が発生して主人公がそれを解消するまでの顛末」が描かれたものです。ただし、これは読者目線です。

作者目線で言うとこうなります。物語とは「対立を発生させて主人公にそれを解消させるまでの顛末」を描くもの。つまり、物語作者の仕事は「わざと対立を作ってそれを解消してみせる」ということなんですね。

 

作者の自覚と覚悟

作者はとにかくまず、全ての原因である対立を自分の手で作らなければならないのです。これは作者としてのマインドセットの話になりますが、もっと能動的に、積極的に、あなたが事件を起こすつもりで書くのです。

バランスを取ったり帳尻を合わせてはいけません。異常な事態を描くのがストーリーの本質なのです。登場人物に空気を読ませてありがちな方向へ押し流してはいかんのであります。

作者は何があっても常識に囚われず、世間とのお付き合いを断固として拒絶し、人でなしの気持ちになって計画を立て、矛盾を抱えているのを承知でむちゃくちゃな決断を下してください。

しかし、同時に全てをコントロールして、最後はスパッと手際よく、あるべきところに収めてください。

あなたは登場人物の依代となり、感情を高ぶらせ、暴走しなければならないのですが、それでもプロットの合理性をキープしなければなりません。

そのために「物語の型」があるのです。

 

対立と解消

いかにして対立を作り、それを解消するか、という話をします。そもそも、対立とは具体的にどんな状況を指すのでしょうか?

対立とは、異なる二つの立場が衝突することです。そして、その対立が原因で具体的な問題が生じてきます。

例えば『水争い』なんかが分かりやすいですね。日照りの夏、山上の水源が涸れ、農業用水路を流れる水の量が少なくなります。そうすると、上流の人は水を堰き止めて、まずは自分の田んぼに水を引こうとします。

ところが、そんなことをされては下流の人はたまりません。「水門を開け!」と怒鳴り込みます。これが対立ですね。

しかし、上流の人は水門を開けようとはしません。下流の田んぼの稲が枯れ始めます。これが対立によって生じた問題です。

問題の解決方法には「相手をやっつける(破壊型)」か「相手と妥協する(和解型)」かしかありません。

水争いの話で言えば、上流と下流で水門を挟んでの肉弾戦で決着をつけるという破壊型ストーリー。

あるいは、話し合いによって両者に等分に水が流れるように水門を開くという和解型ストーリー。

このように、物語はその対立解消の方法によって、破壊型と和解型に分かれるわけなんです。

解決手段は戦争か、あるいは共存か、ということなんですね。

うーん、抽象的な話を続けてたら頭が痛くなってきたわい。なので、もっと具体的な事例を見てみましょう。

 

少年ジャ◆プの王道マンガ

まずは『破壊』をゴールに据えた作品のあらすじパターンです。

「聖闘士☆◆矢」「キ◆肉マン」「ドラ◆ンボール」などなど、少年ジャ◆プの王道マンガでお馴染みのパターンを思い浮かべてください。

主人公が死力を尽くしてライバルを倒します。するとそのライバルの上役みたいなのが出てきて、こいつはさらに強くて怖いわけです。

さてどうするべと主人公が悩んでいると、先日戦ったライバルがやってきて主人公に力を貸してくれるんですね。

いつしか二人の間には戦った者同士の信頼感みたいなものが芽生えており、その友情パワーで新しい敵をぶっ飛ばすわけです。

この時、『和解の対立軸』は、拳を交えたおかげで友情の芽生えたライバルです。

そして『破壊の対立軸』は新たにやってきた怖い敵です。

 

ハリウッド・アニメ

次に『和解』をゴールに据えた作品のあらすじパターン。

実例はあの世界的大ヒットアニメ映画。不思議な力を持った姉とその妹の物語です。もちろん観ましたよね? 歌も熱唱しましたよね? 雪が降っても少しも寒くなかったぐらいですよね。

あの姉妹の映画のことを思い出してください。観てない人はすぐ観てください。

主人公は妹のほうです。姉とケンカした主人公は、姉の怒りを解こうとしてさらに問題をこじらせてしまいます。

その大喧嘩につけこんで、卑劣な悪人が二人を亡き者にしようと背後から忍び寄ります。

それに気付いた主人公は、自分の身を投げ出して姉を守ります。姉はその様子を見て感動し、主人公と和解します。

『破壊の対立軸』があの卑劣な悪人です。最後にお仕置きを受けてました。

一方、『和解の対立軸』はお姉さんです。長い姉妹ゲンカでしたが最後は姉妹愛が復活します。

そして、この物語のゴールはまさに「姉妹の和解」にあるわけです。

 

作者の決断が全てを決める

で、何をいいたいのかというと……

まずは、対立軸はどんな場合でも2つ設定するということです。

破壊型のストーリーか、和解型のストーリーかはどちらの対立軸を優先するかによって決まります。

どちらのタイプの物語であっても『破壊の対立軸』と『和解の対立軸』の両方を設定するのが大事なんです。

次に、『破壊の対立軸』は、主人公と『和解の対立軸』にとっての共通の敵であるという関係性に注意してください。

さらに、主人公が『和解の対立軸』と和解するためには、もともとお互いのことを心のなかで認め合っていなければなりません。

また、当たり前ですが、喧嘩しないことには仲直りが出来ません。

これらのさまざまな制約がプロットをダイナミックに突き動かします。

葛と藤のように絡み合う二つの対立軸が物語を編み上げる縦糸と横糸になっているわけですね。

読者としての分析ならここまででいいのですが、作者としてこの構造を使って物語を書くためにはさらに重要な事があります。

それは「決断」です。

姉妹のアニメ映画は『和解』がテーマになっています。つまり、製作者が『和解』をゴールにすると決めたわけです。

一方、少年ジャ◆プ型では『破壊』をゴールに選んでいます。

どちらを優先するのかは作者が決断しなければいけません。

つまり、物語のゴールとして『破壊』か『和解』かをあなたが選ぶ必要があるわけです。ここに正解はありません。というよりも、どちらを選んでも正解になり得るのです。

ただし、必ずどちらかをゴールにすると自己責任で決めなければなりません。これをはっきりさせないと、どっちつかずの物語になってしまいます。

これからあなたが書こうとしている作品は「破壊の物語」ですか? 「和解の物語」ですか?

頭を使って見極めましょう。

あなたのメッセージを伝えるためには、そして美学や世界観、あるいは素材やキャラに合うのはどちらか。

よく考えた上で決断する。

それが作者の仕事なのです。

 

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アイデアをストーリーにできない

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ストーリーが器の上に積み上げられた「月見だんご」だとしたら、キャラや世界観などのアイディアは「バラバラのだんご」です。お客さんに出すためにはだんごに串を通して1本にまとめる必要があります。

アイディアをストーリーにできないとしたら、それは串に相当するプロットがないからです。

では、ストーリーとプロットとの違いは何でしょうか?

雰囲気やイメージ、キャラクターの個性など、物語世界を構成する全ての要素を含んだものがストーリーです。

ストーリーでは、時間軸に沿ってその出来事が起こった「前後関係」が示されます。出来事同士の関係性よりも、どちらが先でどちらが後かという時系列上の順番が重視されます。

プロットはそんなストーリーの中心的なエピソードにおける「因果関係」だけを抽出したものです。

実例として、日本が誇るお宝マンガ『ドラえもん』から「ネンドロイド」という作品のプロットを見てみましょう。(出典:藤子・F・不二雄/小学館 てんとう虫コミックス「ドラえもん 第35巻」)

▼ぐうたらなのび太はお手伝いや宿題をしたくない
▼だから、自分の身代わりに変身して動いてくれる粘土製ロボット「ネンドロイド」をドラえもんから借りる
▼だから、ネンドロイドでいろんな人の身代わりを作って自分の用事をやらせる
▼だから、暇になったのび太は誰かと遊びたくなる
▼だから、ネンドロイドでしずかちゃんの身代わりを作る
▼だから、入浴大好きしずかちゃんのネンドロイドは、さっそくお風呂に入って溶けてしまう

こうして原因と結果が「だから」でつながっていくのが因果関係です。一つの出来事が次の出来事の原因となります。ある出来事は前の出来事の結果だということもできます。

物語を進行する時は、このような因果関係によってつながっていくストーリーラインが軸になります。出来事が次々に連動することで生まれる変化こそが物語の本質なのです。

この時に大事なのは、話を分かりやすく単純化し、物語を進行させる大筋だけを抜き出す意識です。

こうしてプロットにしておけばストーリーの全体像をすぐに思い浮かべることが出来ます。大きな修正や加工を加える際にハンドリングしやすいわけですね。

ところが、逆に言えば、プロットは読んでもそれほど面白いものではありません。事実関係だけを淡々と述べている無骨な設計図だからです。

作品の面白さや華やかさを担当しているのはストーリーの部分なのです。その大半は進行している事件とは直接関わりのない部分です。

例えばキャラクターの強い個性であったり、人間らしい悩みであったり、美しいイメージやそれに伴う繊細な感覚だったりするわけです。

例えば「ネンドロイド」は使用者の髪の毛を突き刺すことでその個性をコピーできる道具です。そこでのび太は、優等生の出来杉くんの髪の毛を使って作ったネンドロイドに自分の宿題を、力持ちのジャイアンのネンドロイドにはお母さんの肩たたきを代行させます。

これらのエピソードは、ネンドロイドの特徴を説明するための具体的な事例です。この作品の魅力はまさにここにあります。

読者が思わず「ぼくだったらネンドロイドはこう使うな」と考えてしまうこの部分こそがストーリーのコアだと言えるでしょう。

しかし、プロットにその情報は必要ありません。話をオチに誘導するための因果作りには直接関係ないからです。

プロットはストーリーの一部分であり、キャラや世界観などのさまざまな要素をつなぎ合わせるための串です。そして、要約すればほんの数行で収まるものです。

ただし、これが固まっていないとストーリーが終わらない、非常に重要なパートです。プロットがなければ物語としての形をなさないわけです。

しかも、編集者に説明したり、梗概を書いたりする時にはプロットを中心に「超短編小説風」にまとめなければなりません。(三幕構成に従って書いたものをトリートメントと呼びます)他人に一つの筋の通った話として認識してもらうためには絶対に欠かせないものなのです。

あらすじドットコムでは、この「人に見せて説明することが出来るレベルのプロット」をあらすじと呼んでいます。

実際にアイディアを作品化する段階になったら、まずはこのあらすじを完成させましょう。

出来れば、簡単なセリフや描写を入れてトリートメントの段階にしておくことで、物語全体のトーン(調子)や雰囲気がさらに伝わりやすくなります。

 

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イメージをストーリーにできない悩み

美しいイメージはあるのにストーリーにできないで悩んでいませんか?

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自分だけの物語をそろそろ本格的に書きたいのであれば「あらすじ」を作ってみませんか?

どんなものでもいいから、とにかくストーリーを結末まで考えてみませんか?

そのために、まずは「あらすじ」を1本、とりあえず最後まで書ききることを目指しましょう。

小説や漫画やシナリオとして完成しなくてもかまいません。新たなストーリーがデザインできればいいのです。

ただし、『物語』と『あらすじ』の間には文章量以外にも大きな違いがあることを知っておく必要があります。

あらすじと物語の間には

「ホラーの帝王」スティーヴン・キング大先生は『あらすじ』と『物語』についてかつてこんなことを書いてました。

以下はけして正確な引用ではありません。かなり大雑把に紹介しております(^^

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

「ヘンゼルとグレーテル」と聞くとあなたは一番にどの場面を思い出しますか?

多くの人が挙げるのは「目印のパンくずを小鳥が食べちゃうところ」でしょう。

ところが、ストーリーの筋という目線から眺めてみると実はこのシーンは、物語の主題とはあまり関係がないのです。物語の運びに絶対不可欠なものでもありません。

しかし、ある意味ではこれこそが物語そのものを決定的に支配している要素だと言えます。

この部分が、まかり間違えば退屈な話になりかねない題材を、誰もがゾクゾクする、100年経っても面白い物語に仕立て上げています。

その強力なイメージを持つ細部を生み出すことこそがストーリーテリングという魔法の本質なのです。

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

さすがにいいこと言ってます、S・キング。

物語の面白さの本質はストーリーテリングそのものにあり、単なる筋立てなんぞには最高に魅惑的な「何か」がない、と言っているわけです。

まさしくそのとおりです。基本的に『あらすじ』なんてものは読んでもちっとも面白くありません。なぜなら、そこには決定的なものが欠けているからです。

その決定的なものの多くは、おそらく「美」であり、いわゆる細部に宿る創作の女神の張り手的な一撃だと思われます。

「美」は物語の最も重要なエレメンツ

ところが、それほど強烈な要素だからこそ、私たちが物語を発想する際にまずそこから入ってしまうことが多いんですね。

しかし、それではまず失敗します。ほとんどの場合、その最初のインパクトを超えられずさらに話を盛り上げていくモチベーションがなくなるのです。

そこで必要になってくるのが面白くもなんともない『あらすじ』なんです。

あらすじ作りこそは職人の技術であります。そこに必要なのは「独自の美しさ」というよりも「安定して着実に生産できるセオリー」なのです。

芸術至上主義を唱える前に、まずは自分の職人としての腕を確立しなければ創作なんて出来っこありません。

また、美しいものを確実に美しく表現できるようになるためにも、その再現精度を高める理詰めの方法論が必要なのです。

とにかく最初は、いかに正確に、ある表現レベルまで達するか。そして、どれだけ確実な生産力を身に付けるか、ということに全力を傾けてください。

やるべきことをきちんとやっておきさえすれば、残りの時間は「最高に魅惑的な何か」に没頭できるのであります。

キャラや世界観によって醸し出される「美」が『建物』だとしたら、あらすじ作りは『宅地造成』みたいなものであります。

地盤固めや配管や配線と同じで、人の目に触れることはないけれども建物を建てるためには絶対に必要な基礎工事です。

あらすじは、物語のインフラ

例えば、主人公が成長する物語であるとか、苦労して夢を掴むとか、ひどいことをされた奴に復讐するとか、ありえない力を手に入れて逆にさんざんな目に合うとか、そういう大きな方向性ぐらいは初期の段階で決めておかないとストーリーは第1章で止まります。

それをイヤでも作るのが「あらすじ作り」であり、そのために「型」を使ってストーリーをデザインするのに必要な準備をするのです。

主人公の目的や、そのゴールが達成できるかどうかを決めずに物語を作り始めるのは、ライフラインのない家に住むようなものです。

もう一度言っておきましょうね。

基本的に『あらすじ』なんてものは読んでもちっとも面白くありません。だから、必要なのにも関わらずみんな遠ざけたがるのです。

しかし、どんな業界においても基礎知識の有無は決定的です。そのイロハだけでも学んでおくと恐るべき効果があることを知っておくといいですよ。

あなたの主人公には対立する「敵」が必要か? それとも、主人公の目的をジャマする障害物があるのか?

主人公は追いかけるべき「目的」を持っているのか? それとも、たまたま問題に巻き込まれてしまうのか? あるいは、一見そう見えて実は最初から敵の仕組んだ罠だったのか?

読者の興味を持続させるためにどんな謎を投げかけるのか? そしてその謎にはどんな答えを用意するのか?

もしくはいわゆる「やおい」的な作品として完成するつもりなら、どこに注意して会話すれば、より深い共感を持ってもらえるのか?

以上のような問いに対して答えるすべを持っていないのなら、まずは「1日1あらすじ」を目標に、たくさんのストーリーを考える練習をしてみてください。

その際には、キャラの見た目から妄想に入るいつものやり方をぐっと我慢して、「物語の進め方」を地道にしっかりと固めることが大事です。

豊かな果実をすぐに手に入れたいのに草むしりと地ならしは一見それほど楽しい作業ではないかもしれません。

しかし、そこから始めるのが最も効率的なやり方だと私は信じています。

 

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クライマックスの作り方

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TVドラマ「ミディアム」

全米で人気を博したTVシリーズ『ミディアム 霊能者アリソン・デュボア』は、死者からのメッセージを夢に見るという能力を持つ実在の女性をモデルにした作品です。

そう言うと、オカルトものかと思われるかもしれませんが、意外にもホームドラマを絶妙にブレンドした明るく楽しい検察ミステリーなのです。

とは言え、起こる事件は殺人、誘拐、強盗、暴行。ヒロインのアリソンは三児の母でありながらその特殊な能力のために、家事の合間に血なまぐさい犯罪現場に駆り出される日々。

被害者や犯罪者の霊、時には亡くなった先祖からも頼られて、悪夢にうなされながら難事件を解決していきます。

妻の不思議な力をいまいち受け入れることができないロケット工学者である夫と、どうやら母親の能力を引き継いだらしい三人の娘たちに囲まれて、危険な業務や恐怖の心霊体験にドタバタしながらも幸せな家庭生活を送る主婦の物語です。

カテゴリーぎりぎりの独特な設定がやみつきになる一話完結型なのですが、ミステリーとして非常にしっかりとした骨組みを持っています。ヒロインの霊感はあくまでも推理の材料の一つであり、それだけに寄りかかった解決はしません。

「問題解決の切り札」の設定が見事なのであります。

私は今、1周見終えて(全7シーズン130話ありますが)2周目のシーズン2に突入したところです。1周めは楽しむだけでしたが、今度はコツコツと構成をチェックしながらの鑑賞となります。特に気を入れて行っているのが、その多彩な「問題解決の切り札」のパターン分析です。

いやー、とっても参考になります。
というか、宝の山であります。ありがとうハリウッド!

問題解決の切り札

この作品で学んだ数々の切り札テクニックはいつか発表したいと思っていますが、それにしても感じるのは『基本の大切さ』です。物語終盤で起こるどんでん返しや逆転を成立させるために、各登場人物のストーリーラインがどんな役割を担っているのか? そして、難解な事件を最後の3分で解決するために、いったいどんな切り札を用意すればいいのか?

そんなエンタメ・テクニックの全てを理解し、吸収するためには、人を楽しませるストーリーの基本的な構造を知らなければなりません。

特に重要なのが「問題解決の切り札」の知識だと私は考えています。

これを知っているのと知らないのとでは、構造分析にかかる時間が10倍ぐらい違うと思います。

無知は、せっかく名作で惜しげも無く披露されている「切り札」の数々を自分のものにするチャンスをふいにし、あなたの作品の評価を一挙に3段階ほど上げるための技術(本当にちょっとしたコツです)を一生手に入らなくします。

特に「どんでん返し」や「切り札」などの重要なポイントに対する知識の欠如はストーリーテラーにとって致命的だと思います。

もちろん自己流でも学べます。私のようにお気に入りの名作を見つけて、納得できるまでノートに書いて徹底的に分析すれば、誰でもスキルを身につけることが出来ます。ただ、ひと通りのパターンを把握するだけで数年かかると思います。

 

クライマックスの作り方

クライマックス・シーンとは問題を解決する場面です。

「無実の罪で追われながら主人公はどうやって真犯人を捕まえるのか?」
「スパイが恋人を敵国の牢獄から救出すると同時に機密情報を盗み出すには?」

素晴らしいクライマックスを作るには、そんな難問奇問を解決するための『切り札』を設定する必要があります。

そして、その『切り札』の仕組みが分かれば、誰もが唸る問題解決方法をもっとサクサクと作れるようになります。

これまでさんざん苦しめられてきた、「盛り上がらない終盤」と「長すぎる執筆停滞」から、あなたを解放することが出来るのです。

手に汗握って引きこまれ、何年経ってもそのカタルシスが忘れられない……
そんなクライマックス作りは物語創作の最重点課題です。

 

 

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面白い物語のコアなアイデア

面白い物語のコアなアイデア発想法

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分かりやすく面白い話を発信するために

今、この文章を読んでいるということは、あなたは近々に「是が非でも何か面白い話を作って発表しなければならない!」という立場にあるのだとお見受けします。

その物語は小説になるのかもしれないし、漫画かもしれません。ドラマの脚本やゲームシナリオということもあるでしょう。あるいは、商品を売り込むためにセールスレターをまとめているのかも。

しかも、応募の締切が近づいているとか、週明けの会議でプレゼンしなければならないとか、学校の発表会が迫っているという切羽詰まった期限があるのでは?

ジャンルや動機が何であるにせよ、のんびりしてはいられません! そこまで追い詰められているのであれば(笑)今すぐ以下の2つの技と知恵を身に付ける必要があります。

(1)自分の考えや気持ちを他人にわかりやすく伝える発信力(たとえあなたが人と接することが苦手でも)

(2)誰もがあなたの話を喜んで聞いてくれるようになる方法論(たとえ初対面の人が相手でも)

そして、その2つを同時に満足させ得る答えはただ一つしかありません。それは、『面白い話をする』ことです。
面白ければ興味を持って話を聞いてもらえます。それどころか、相手はすすんで理解しようとさえしてくれます。

ぴこ蔵メソッドの目的とは、まさにそんな「面白いストーリー」の創作体験であり、その究極のスキルが「どんでん返し」に代表される『驚き』を作るテクニックというわけです。

ただ、実はここに至るまでに、ぜひ知っておいたほうが良い技術があります。

それは、面白い話の元となるコアなアイデアを作る方法です。

最もシンプルな作り方

物語の中心的なエピソードがありきたりだと、どう頑張ってもやはり面白くはなりません。核心となるシーンには、少なくとも読者や観客を「ほほぅ」と驚かせるだけの、一定水準以上のクオリティを持つアイデアがなければ盛り上がらないのです。先々の展開を読まれてしまいますからね。

では具体的にどうすればいいアイデアを思いつくのでしょうか。

ぴこ蔵が最も信頼し敬愛するイタリアの児童文学者、ジャンニ・ロダーリはこう言っています。

「面白い物語を作りたければ、まずは、二つの言葉(概念)の面白い組み合わせを見つけること」

ロダーリはこの手法を『ファンタジーの二項式』と名づけています。この時、言葉と言葉との間に「距離」があればあるほど面白い成果が出るということです。

ロダーリは例として「犬」と「たんす」という組み合わせをあげています。確かにいい具合に距離を感じますよね。

『ファンタジーの文法 物語創作法入門』ちくま文庫 訳・窪田富男)

ただ、案外この「距離」の発見が難しいのです。距離と言っても、もちろん物理的なそれではありません。ドラマ性を感じ取るのは人の心理の働きであり、つまりは「意外性」なのであります。

対立する感覚を見つけるのが早道

距離発見のカギの一つは、例えば「快」と「不快」といった対立する感覚です。
対立からは心理的な距離が生まれやすいのです。

例:【快】好きなものや楽しいもの×【不快】嫌いなものや怖いもの

・ガトーショコラ(チョコケーキです)×注射
・アイドル×怪物
・牛丼×暴走族

そんな対立する物同士の組み合わせが心のトリガーを引きます。振り幅というやつですね。

前置詞を使えば思いがけない組み合わせが見つかる!

ここでさらに面白い関係性を発見するために、ロダーリのテクニックを利用してみましょう。それは「前置詞」を使うという技です。

「何を突然、英語の勉強なんか始めてくれちゃってんだよ」と身を固くしたあなた。
大丈夫ですよ。中1で習ったごくごく簡単な前置詞を思い出すだけでいいんです。

in,on,from,to,for,by,of……etc.

これくらいだったら誰でも知ってますよね。

これらの前置詞を使って、先ほどのような「名詞の組み合わせ」の新たな関係性を探すわけです。すると自分が発想したことのない絵柄の状況を発見できます。

ちょっと面倒くさいかもしれませんが、それにも関わらずわざわざ使いたくなるぐらい、この手法は発想に便利なのです。具体的にやってみましょう。

「名詞+前置詞+名詞」から短いエピソードを作る

まずは御本家の発想例から紹介しましょう。前述の『ファンタジーの文法』によると、ロダーリは「犬」と「たんす」という名詞の間にイタリア語のさまざまな前置詞を配して

・たんすを背負った犬
・犬のたんす
・たんすの上にいる犬
・たんすの中にいる犬

……などの状況を作ってみたそうです。

そしてロダーリが選んだのは「たんすの中にいる犬」でした。つまり、「犬 in たんす」というわけですね。この絵柄が作家の心の何かをピピっと刺激したのだと思います。

さらにその状況から……

「主人公が帰宅すると、家の中のあらゆるたんす、家具、家電の中に犬がいる。しかし心優しい主人公は彼らを追い出すのではなく溺愛し、犬の食事のために毎日10キロの肉を買い続ける。するとそれを怪しんだ肉屋があらぬ噂を流し、人々がそのデマを拡散し、しまいには警察がやってきて……」

という物語を発想したのです。

それでは、ロダーリ先生に負けないように、私たちもこの手法に挑戦して「今まででは考えつかないような発想」を生むコツをつかみ取ろうじゃございませんか。

私は大好きな「ガトーショコラ」と大嫌いな「注射」という組み合わせを選ぶことにします。

(1)さっそくガトーショコラと注射の間に前置詞を置いてみましょう。

・ガトーショコラ from 注射
・ガトーショコラ to 注射
・ガトーショコラ for 注射
・注射 in ガトーショコラ
・注射 on ガトーショコラ

(2)そして、この組み合わせの中からぴこ蔵が選んだのは……

「注射 in ガトーショコラ」

(3)その視覚的なイメージとしては……

・ガトーショコラの中に隠された注射器

これは怪しい。危険な香りがしますねえ。なんでまたそんなことをしたのでしょうか? 何かが起こりそうな気配が立ち込めてまいりました。

ピンとくるかどうかは、こうして前置詞が示す状況をビジュアルで想像すると分かりやすいと思います。私にはなんとなくそんな絵柄が見えたわけです。

チョコケーキではなくガトーショコラという一歩踏み込んだ名前を使ったというのも、ある種の雰囲気が感じられて想像がふくらんだ原因かもしれません。

また、注射ではなくて「注射器」に変更したのも視覚化に役立ちました。発想のきっかけはけっこう微妙なところに潜んでいるのです。

それではこの状況を活かしてエピソードを作ってみましょう。

お話作りのヒント

「もの」は「人間(人格があるもの)」に結びつけることで、どんどん物語になっていきます。ストーリーとは登場人物に付随するものだからです。

そこで「ガトーショコラの中に隠された注射器」に人間をからませていきます。

・誰が注射器をお菓子の中に隠したのか?
・それはいったい何のためか?
・誰が最終的にこの注射器を使うのか?

それらの疑問に答えることで、自然に人間と小道具との関係が明らかになってくるはずです。

ここで大切なのは「対立」の原則です。

・誘拐の標的 VS 誘拐犯
・悪ガキ VS 大人

このように幾つか対立点を重ねると、緊張感が高まって面白くなります。

そして、とどめに「逆転」の仕掛けを入れることで、ストーリーがぐっと活性化します。そのポイントは――

・誰が最終的にこの注射器を使うのか?

……という「オチ」の周辺に存在します。

例えばこんな感じ:

———————
パーティ会場で金持ちの子どもに近づいて誘拐するために、悪者が睡眠剤入りの注射器をガトーショコラの中に隠し持っていた。ところがその子はいたずら好きな悪ガキで、先にその注射器を見つけて、悪者の飲み物に中身を注射する。緊張で喉が渇き、その飲み物を一気に飲んだ悪者。その服のポケットに空の注射器をそっと返す悪ガキ。ふらついて倒れる悪者。介抱した人がポケットの注射器を発見して警官を呼ぶ。麻薬常用者として逮捕され、千鳥足で連行されていく悪者。
———————

こんなふうに、「ファンタジーの二項式」を使って、小さな、しかし何かピリッとした事件が起こるエピソードを作ってみましょう。

 

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面白い物語を組み立てる

面白い物語を組み立てるためのマストなプロセスとは?

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物語作り、最初は楽しくなければいけません

初心者の作品は、往々にして抽象的過ぎて、何を書いているのか分からなくなりがちです。

いかに高邁な真理が書かれていても、そこに読者の望む刺激的で興奮を誘う情動、あるいはよほど目新しい発見や衝撃的な思想などがない限り、頭でっかちで退屈な作文だと認識されるのがオチです。ですが、誰でも最初はそんなものなのです。むしろ、それでいいのです。

「物語を語りたい」「心の中で燃え上がるイメージを言葉にしたい」そんな原初の衝動がペンを握らせキーを叩かせるのですから、他人が何を言おうと関係ありません。そこに必要なのは技術よりも意志です。

あなたは何もない所からエンタメストーリーを作っていくのです。ゼロから数字を生み出すという一種の奇跡を起こすわけです。この段階で文章や絵の批判に耳を傾ける意味は全くないのです。

机に向かって最初の何百文字かを書きつけるというのはまさにそういった自分だけの情熱に身を任せることに他なりません。時間にすれば二時間ほどでしょうか。ただし、狂気の二時間です。この間はどうぞあなただけの幻想、妄想、瞑想に思いきり耽溺してください。ここは作者の時間帯です。

次の段階は読者のために

しかし、もしもあなたが次の数時間を今度は読者のために使う気持ちがあるのであれば、どうか頭を切り替えていただきたいと思います。少しでも分かりやすく、一瞬も退屈させることなく、そして可能な限り空想の翼を広げてもらうために、サービスの鬼と化して全力を尽くしてください。

初心者は取材なしで本編を書き上げようとします。これではリアリティーが生み出ません。妄想だけではバランスの悪い、非常に幼い世界しか表現できません。いかなるファンタジーであっても、大切なのは読者が生きている現実世界の常識や感覚です。そこに違和感があれば(それが意図されていない場合には特に)読んでいる人は共感を持てなくなってしまいます。

そもそもエンタテインメントというものは「人生の意味を問いかける」純文学とは違って、「人生は生きるに値する」という前提から出発します。哲学や芸術を追求するのならばエンタメに手を出してはいけません。ここは徹底的に技術だけが支配する職人の世界です。目的はただ一つ、時間を忘れて楽しんでもらうこと。

エンタメとは、不条理な人生を生きる人たち、弱っていたり傷ついている人たちを支え、癒し、応援するために求められる存在であることをけして忘れないでください。自分の主張や意見をただ発表してもしょうがないんです。読者に心の底から愉しんでもらえないと意味がないんです。

では具体的にどういうふうに考えていけば、自己満足の殻から一歩踏み出した客観的に面白い作品を、合理性を持って作り出していけるのでしょう。そのためにはコンセプトを明確にすることが重要です。楽しませるための的を絞るわけです。

コンセプトをはっきりさせよう

例えば「想定する読者は誰で、ジャンルは何で、刺激したい感覚はどれか」そんなこと考えたこともないという人がほとんどだと思います。夢も希望もない話だとがっかりされる方もいるかもしれませんね。

しかし、それが物語が面白くならない大きな理由です。

書きたいものを書くな、読みたいものを書け! と申します。

どんな人がどんなものを読みたがっているのか? その嗅覚がなければエンタメのプロにはなり得ないのです。しかも、大きな作家になりたければ、より大きなターゲットを狙うことが必要です。

そのために、あなたはどんな読者に対して作品を書いていくのか? その読者層はあなたの目標にしている人数を満足させるのか? 一度でいいから考えてみるべきです。

これは作品の質を下げる卑しい考え方だと思う方もいるかもしれません。作家たるものはそういう商業的な観点で作品を見てはいかんのだ、とプライドを持って断言する人もいらっしゃるでしょう。

いつも言いますが、そういう方は純文学を書くべきなのです。人生の意味を問い、人間の本質をえぐり出し、社会を批判し、世界に警鐘を鳴らし、人類にとっての文学の可能性を追求すべきです。

しかし、あなたが創作対象に選ぶのはエンタテインメント作品です。文学的アカデミズムとは一線を画した「大衆の娯楽」なのです。

私たちは、路上の大道芸人であり、街角のバンジョー弾きであり、薄暗い部屋にたたずむカードマジシャンなのであります。私たちが知らねばならないのは『現実世界』とそこに棲む人々。そして彼らの情念です。私たちは読者をもっと知らなければならないのです。

逆に言えば、ターゲットがはっきりすれば格段に書きやすくなります。その上で、その制約に沿ったテーマを考えます。テーマと言うのは抽象的なことではありません。

「主人公の目的は何か?」「邪魔をする敵や障害物は何か?」「主人公のゴールはどこか?」そして「主人公の意識や世界の変化をどう表現するか?」これらをそれぞれ決めたら全ての要素を一連の流れにしてください。

まずは『目的』です。主人公が何を求めて行動するのかを決めるのです。そのきっかけとして「何者かに大切な何かを奪われる」ことで目的が作りやすくなります。そうするとゴールは必然的に、『いかなる形で目的を果たすか?』つまり、「奪われた大切なものを回復する方法は何か?」という『形式』の問題になるわけですね。

「奪還」「復讐」「獲得」

物語における「目的を果たすための形式」には大きく分けて三つのパターンがあります。それは「奪還」か「復讐」か「獲得」です。

奪われたものを奪った相手から取り戻すのが「奪還」です。奪い返せない場合の欠落感の代償行為が「復讐」です。そして、奪われたものではなく新しい何かをゲットするのが「獲得」です。大概の物語の目的は以上の三つのどれかになるわけです。

さて、『敵』とは「主人公から何かを奪った者」であったり「目的を追う上での邪魔者」ということになります。ポイントはそこに「恐怖心」が存在することです。この陰りがない相手はあまり魅力的な敵にはなりません。「恐怖」こそが『悪』を生みます。

主人公はそんな『悪』を抱いた敵に対する自分の中の恐怖心と戦うことになります。恐怖に負ければ主人公もまた『悪』に染まるのです。そういう意味では主人公と敵は合わせ鏡です。そんな恐怖心を克服するからこそ戦いに意味が出てきます。そして、その克服の過程こそが『変化』なのです。

『目的』『敵』『変化』

この『目的』『敵』『変化』が決まれば物語の背骨が出来ます。

「奪われた『目的』を追う主人公が、欠落感からの回復を邪魔する『敵』と戦って、悪への入り口となる恐怖心を克服するために『変化』する」

必然的にゴールはその流れに沿って決まるでしょう。エンタメ作品のストーリーを構成しようと思ったら、まずはこの話を800文字で作ってみましょう。コツは具体的な行動や事件を設定することです。

例えば「ヒロインが本を読みながら考える」だけではあまりにも画面が動きません。そこには椅子に座った女の子がいるだけです。大切なものを奪われた主人公はそれを追いかけなければなりません。歩くにせよ走るにせよ、バイクや車や飛行機に乗るにせよ、主人公は椅子から立ち上がり、扉を開けて外に出るのです。

あくまでも具体的に。意識描写や抽象的な表現はまだまだ書いてはいけません。何が起こったか、どう行動したか。全てはまずそこから始まるのであります。

悪と正義、どっちがどっち?

友人のシナリオライターさんからFacebook上にこんな記事があると教えてもらいました。

秀逸なのでシェアします。
↓↓↓↓

「正義の味方と悪の組織の違い」

悪の組織の特徴
1 大きな夢、野望を抱いている
2 目標達成のため、研究開発を怠らない
3 日々努力を重ね、夢に向かって手を尽している
4 失敗してもへこたれない
5 組織で行動する
6 よく笑う

正義の味方の特徴
1 自分自身の具体的な目標をもたない
2 相手の夢を阻止するのが生きがい
3 単独~小人数で行動
4 常になにかが起こってから行動
5 受け身の姿勢
6 いつも怒っている

※ ネット上では有名なコンテンツなのだそうですが元ネタは見つけられませんでした。

悪があってこその正義の味方

上記の「悪と正義」の対比ですが、両者とも最後の1行が特に秀逸で笑ってしまいます。まあ、この記事自体は半分ジョークなんですけど、半分は非常に正確に「悪と正義」の実相を捉えています。

要するに、正義と言うのは悪に対する対症療法的な抵抗であり、悪よりもずっと狭い行動基準によって成立しているわけです。正義はそれだけで自立する現象ではなく、あくまでも先に「悪」が存在し、誰かに何らかの損害を与えるから「正義」の味方がその補償を求めて立ち上がるのであります。

そんなわけで、物語の主人公が正義の味方型の場合、その目的の大半は「復讐」か「奪還」になります。

持っていないものを「獲得」しようとしてその行為が他者や共同体に迷惑をかけた場合、その人間は『悪』として断罪されます。それがいいとか悪いとかの問題ではありません。

能動的な行為が「悪」であり「欲望」だと断罪されてしまう状況は地球上の至るところに確かに存在します。実際、目立つことが悪と同義のように扱われてしまう文化はこの日本においてもさんざん目にするところであります。

それを念頭において、状況に合った「悪役」を造型することが、あなたのキャラの説得力を増す上で重要なのです。

 

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